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田中英和先生のワールドダンス

コラム&本誌企画

新年明けましておめでとうございます

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 2025年が始まりました。豪雪で大変なことになっている地域もあるようですが、大災害につながらないことを祈っております。昨年の大地震や豪雨での被害に、今なお苦しまれている方もいらっしゃるとのニュースを見るたびに、自然災害の恐ろしさを思い知らされます。今年一年、皆様が健康で、無事に過ごせることを祈りたいものです。

 この1月、私は英国での活動期に入っております。1月も2週目に入ると世界から競技ダンサーたちがロンドンの主要なダンススタジオで、BDF主催スターボール、BDC公認のユニバーサル選手権、そしてメインイベントのUK選手権に向けてレッスンを受け最終調整に励んでいます。名門、スターライトダンスセンターでも、世界のトップコーチャーが選手のサポートに余念がありません。

 新たにターンプロする将来有望なダンサーの挑戦も楽しみですし、各セクションでの新チャンピオン誕生もまた、大いに可能性のあることです。

 さて、話は変わって、最近の傾向についての私の感想を述べたいと思います。

 自分が現役選手だった時代から毎年1月はこちらで活動する生活が続いていますが、世界のダンスの流れを垣間見てみますと、随分雰囲気が変わった印象を受けます。

 今でも英国を中心にダンス界は動いているように思いますが、従来の3大大会以外にも、3月時期に新たなフェスティバルとして英国南部の保養地ブライトンで「マジェスティックダンストーナメント」が、5月初旬にはブラックプールタワーでの「ジ・オープン」なども開催され、それぞれ活況を見せています。また4月には「WDSFダンスフェスティバル」がブラックプールのウィンターガーデンで開催されるニュースも飛び込んできました。

 しかし、逆にこういった流れがレッスンを受ける側のスタイルに変化をもたらしているようです。これらの大会前には決まって世界各地で「ダンスキャンプという集団トレーニングが開催されており、それらキャンプに参加し、世界のトップクラスを交えて刺激し合う環境に身を置いたのちに、英国で個別にレッスンを受けて大会に挑むというスタイルに移っています。ということは、大会が増えることで、じっくり腰を据えてダンスに向き合っていくというスタイルではなくなっているように感じます。

 プライベートレッスンを受けるよりもダンスキャンプを選ぶ理由として、やはりダンスがスポーツ競技として捉えられていることが大きいと思います。どこかのスポーツ用品メーカーのCMであったように「強く、高く、逞しく」というフレーズが、ダンスにおいては「強く、速く、美しく」となりましょうか。それは皆が求めるものですが、それを競技会のフロアでなかなか見せることができない現実に、皆が悩むのです。外面に見えるものを確立する必要が、ダンスキャンプのような刺激を受けやすい場所に身を置く傾向になるのではないかと感じています。ダンスは見た目勝負ですが、その強さや美しさは理解や経験、時間や空間やインナーマッスルの躍動など、表面には見えないものが生み出すもの、醸し出すものだと私は理解しています。

 私はダンスキャンプも練習会も否定しているのではありません。見て、聞いて、知って、トライする素晴らしいきっかけになるのですから、参加できるときはするべきです。私が現役時代はロンドンで毎晩開催されていたプラクティス・ナイト、夜8時からの自由練習で本番さながらに大汗をかきながら踊り狂ったものです。ただ、その環境に身を置く前には丁寧なレッスンを受け、地味としか思えない動作を繰り返す「練習」を大事にしました。そのバランスで成し得たものが競技の場で発揮できるようになったときに、初め
て成績が動いたのです。

 世界を見て、世界に感銘を受けて、世界に憧れて、世界に目標を持つ。素晴らしいことです。しかし、教えてもらって上手くなるものでもありませんし、海外に行ったからといって強くなるものでもありません。正しい理解をし、思い込みがあれば修正し、まずはやってみて、修正しながら繰り返すこと。何を持って良しとするのかを理解し実行に移す。そして、それを繰り返すしかないのです。

 今年はまた新しい旋風が吹き荒れる年になりそうです。日本も遅れを挽回すべく、大いなる躍進の年になるようしっかり前むきに取り組んでいきましょう!

 今年もよろしくお願い申し上げます。

(月刊ダンスビュウ2025年3月号掲載)

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プロフィール

  • 田中 英和

    生年月日:8月9日
    出身:広島県広島市出身
    経歴:1997年2月にアデール・プレストン選手とカップルを組み、5月の全英選手権で日本選手初の第3位表彰台に輝く。「ヒデ&アデール」の愛称で国内外の大会で活躍し、翌98年の全英選手権5位入賞を最後に現役を引退。以降、審査員、コーチャーとして後進の育成にあたっている。また、本誌でも、7年にわたって連載レッスン「ナチュラル・ダンシング」シリーズを執筆し、大好評を博した。
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