ダンススタイルの変化とシングルダンス競技会
あれよあれよという間に今年も終わろうとしています。この1年間の競技会を振り返り、総括すべき時期に来ているように思います。皆さんにとって今年はどのような年だったでしょうか? 成績として現われれば納得もできるのでしょうが、成績につながるまでには時間がかかるのも、この競技の難しいところです。来年の国内外の競技会シーズンを見据えて、効率の良い練習とレッスンのプランを建てるのも大事なことです。諦めず焦らず、自身のベストパフォーマンスを目指して突き進んで欲しいと願います。
この秋シーズンもビッグイベントが目白押しでした。JCFのギャラクシー、札幌でのJBDF全日本、JDSF三笠宮杯、NDCJの統一全日本、統一ショーダンスと全国区レベルの大会で大熱戦が繰り広げられました。海外でもロンドンインターや中国深釧でのWDOワールドカップ、アメリカでのWDC世界選手権等、多くのダンスイベントが開催されました。今を戦うダンサーたちが今の時代を作り上げ、そして次の流行を予言していくのです。大会に参加し続け、その最前線に触れ続けることが、時代遅れにならないためにも大事なことなのです。
2024年10月20日に開催された「統一全日本選手権」では、ラテン部門で連覇を達成した野村直人・山﨑かりん組、そして準優勝に大躍進した八谷和樹・皆川円組、表彰台堅持の竹内大夢・中島由貴組が日本のラテンアメリカンのレベルを大いに押し上げてくれています。初ファイナルの髙野大樹・加藤奈々組も今後大いに期待が持てるダンサーです。
ボールルームでは初優勝を飾った福田裕一・エリザベス組を筆頭に大熱戦を繰り広げてくれました。西部の島田寛隆・村松明香組、そしてJCFの期待の星、山本千博・大吉優華組など世代交代を感じさせる結果となりました。JBDF全日本では、大西亘・ちかる組が北海道から久しぶりに全日本ファイナリストに輝いたことも特筆すべきことでしょう。
他にもプロやアマチュアでも将来性のある若いダンサーが増えています。近い将来にはその数はもっと増えていくことでしょう。新たなダンス界への道が開けて来ているように感じるのは私だけではないでしょう。
年内も台湾やシンガポールなどで世界レベルの大会は開催されています。年明けには英国でStar BallやUK選手権が開催されます。しっかりとプランを立てて果敢にチャレンジしていってほしいものです。
さて、ダンスのスタイルも年々移り変わっています。今はよりスポーティーになる傾向にあり、パワーやスピードが求められているのは明らかなことです。その背景には今、世界で盛んに行なわれているシングルダンス競技があると思います。
最近は中国や台湾、シンガポール、マレーシアなどでの大会では、シングルダンスと呼ばれるソロ、いわゆるシャドーコンペが非常に盛んに開催されているのです。本当に多くの子供たちが出場し、ピチピチと若さあふれるシャドーダンスの競技は、ボールルームでもラテンアメリカンでも見ているだけでワクワクするものです。身体能力と音楽性を存分に発揮して生き生き踊る子供たちは、将来のチャンピオン候補。審査を担当する者としても、宝物を発掘するかのような気持ちで審査に臨むことになります。
このシングルダンスによる個人のレベル向上が、ひいてはカップルとしての力強いハーモニーを確立するベースになっているのが今や世界常識。近年、中国を筆頭に台湾、フィリピン、シンガポールなどのアジアの競技ダンサーのレベルアップのベースに、若い子供たちのシングルダンスへの競技熱があることは否定し難い事実なのです。個のレベルアップが、カップルのレベルアップに直結している証拠です。日本でも地域によっては盛んに取り入れ始めていますが、組織をあげて子供たちのシングルダンス競技をどんどん取り入れていくべきでしょう。
ダンスは一人で踊っても楽しいもの。それがさらに二人でシンクロのように踊るダブルスでも楽しいもの。楽しさを覚えたら勝つことの楽しさへと展開していくことでしょう。若い世代のエネルギーはダンス界全体の活性化に必須条件だと思います。
来年は従来の競技スタイルに加えて、アマプロ選手権、アメリカンスムースも、そしてシングルやダブルスなど、より自由なスタイルでのダンス競技も大いに広まってほしいものです!
(月刊ダンスビュウ2025年1月号掲載)