台湾コンペレポート
日本国内の観光地は、一般の旅行者から海外からのインバウンド旅行者まで、多くの人出で大賑わいをも見せています。新幹線のプラットホームも空港のターミナルも人で溢れ、今月末にはコロナによる制限もなく4年ぶりに「自由」なゴールデンウィーク(GW)を迎える日本。インバウンドの皆さんも、国内旅行を予定されている皆さんも、もちろん海外旅行を楽しみにされている方々にとっても、待ちに待った素晴らしい休日となることでしょう。
しかし、日常生活を見てみますと、マスク着用も個々の判断に委ねるとの政府見解が出されても、花粉症や黄砂の影響もあり、まだまだマスクを着用している方がほとんど。GW明けの5月8日には感染症の第5類として扱われ、事実上パンデミックの終焉を迎えることになりますが、このマスク着用の習慣はまだしばらくは続くことになるのでしょう。先日、私は台湾での競技会に審査員として参加しましたが、台北市内でのマスク着用率も日本同様かなり高いように思えました。これもアジア圏特有の習慣なのでしょうか。
その台湾での競技会ですが、毎年この春シーズンに「舞王~ワールドカップ」と壮大なネーミングの大会として開催されています。今年は4年ぶりに海外から選手、審査員が多数参加する国際競技会として開催されました。ただ今回は、東アジア、東南アジア、オセアニアからのエントリーがほとんどで、まだ欧米諸国からのエントリーは少ない状況でした。
台湾への入国も大幅に緩和され、何ら規制がない状態で入国することができるようになっていますから、今後は台湾だけでなく、韓国やもちろん日本などの東アジア諸国での国際大会では、コロナ前以上のレベルで開催されていくことは大いに期待できるでしょう。
さて、今大会のスタンダードセクションでの世界オープン戦では、シンガポールに拠点を置いて活動しているロシアのスタニスラフ・ゼリアニン&イリーナ組がUK選手権準優勝の勢いのまま、今大会で見事優勝を飾り、2位には香港で活動しているウクライナのディーマ・ダコノフスキ&アナ組が、そして第3位にはイタリアのマルコ・キャマリンジ&マルチナ組と続きました。日本の福田裕一&エリザベス組も素晴らしいダンスを披露し決勝に進出、第5位に入賞しました。ラテンオープンでは香港に拠点を置くロシアのキリル・ベロルコフ&バレリア組が圧巻のダンスで優勝を飾り、会場のファンを大いに沸かせました。
そのほかオープン戦以外にアジア太平洋選手権があり、福田裕一組が準優勝、山先允芳・武田佳子組、田中健太郎・三田聡美組がオープンと同じくセミファイナルへ進出。ライジングスター部門では田中健太郎組が優勝を飾るなど、好成績を残したことを報告させていただきます。なお審査員として日本から金光進陪氏と私の2名が参加しました。
この大会の成功を見るにつけ、主催者のマイケル・ワン氏は台北市政府とうまく関係を築いていることに気付かされます。この大会は台北市政府体育局の指導のもとで開催されており、台北市立大学の体育館が会場となっていました。市立大学という公共の会場が使える背景は、やはり行政とのタイアップがあってのことでしょう。
午前中から午後にかけてのセクションはジュブナイルやジュニアの部門が多く、ソロ競技で子供たちが練習の成果を発揮すべく生き生きと踊るのを審査することは、とても興味深いものでした。これほど多くの子供たちが参加している台湾のダンス界を見ると、将来の台湾のダンス界は明るいと思えるのは当然のこと。やはり行政とタイアップしていることの強みはこんなところにも現れていると思いました。
大学の体育館ではあっても、照明にしても音響にしてもワールドカップの名にふさわしいショーアップがなされ、体育館での開催と思わせないほど素晴らしいものでした。メインイベントの夜の部が始まる頃には、会場は満員の観客で埋め尽くされ、大変な盛り上がりを見せていした。官民がうまく協力関係を持って運営する、日本のダンス界も将来を見据えて発展していく背景には、こうした行政との連携が不可欠なものだと再認識した次第です。
(月刊ダンスビュウ2023年6月号掲載)