インターナショナル選手権(ロンドン)
英国3大大会の最終戦、「インターナショナル選手権大会」(10月11日〜13日開催)のレポートをお届けいたします。
大会初日と2日目は会場をロンドン北東部の郊外、ブレントウッドのインターナショナルホールで開催され、ジュブナイル、14歳以下、ジュニア、21歳以下、シニア、50歳以上とプロライジングスターの各カテゴリーで熱戦が展開。そして各セクションの表彰の後に、最終日の10月13日(木)、ロンドン中心部ハイドパークに面した由緒あるロイヤルアルバートホールでの本戦出場を懸けたプロ、アマの予選会(クウォリファイ・ヒート)が開催されました。
今回、特筆すべきことは「中国の大躍進」でしょう。プログラムを見ると、中国選手の出場組数はジュブナイルからプロまで入れると延べで288組にも登ります。最も多いのがジュニアラテンで、エントリー数117組のうちの46組を占め、実に40%が中国からのエントリーです。一方、日本からはプロのみのエントリーで、ライジングと本戦のラテン、ボールルームの総数は延べ131組。
大会前のロンドンの主要なダンススタジオはレッスンを受ける中国選手でいっぱいで、スタジオ開催の練習会でも中国人カップルで大賑わいでしたから、このエントリー数も当然でしょう。成績も優秀で、低年齢のセクションにもファイナリストを送り込み、さらにアマチュアボールルームでは4組がセミファイナリスト、そのうちの一組、チャールズ&サラ組が初優勝を飾っています。
中国の舞踏学院の生徒たち、そして卒業生がプロとして参加しており、また学院の指導者もジャッジに入り、おまけに大会スポンサーがここ数年中国の基金や財閥、企業などであり、中国なしには世界のダンス界は語れないほどの活況を呈しています。
地元英国も黙ってはいません。激減したアマチュア選手の数も一時より増えており、ボールルームでは21歳以下やジュニアで優勝、アマ部門でのファイナリストも現れています。ヨーロッパ勢としてはウクライナ、ロシアの選手がエレガントでスタイリッシュなダンスを披露し、好成績を残しているのが目につきました。
プロのセクションで強いのは、やはりアメリカ。政治的、あるいは経済的理由など状況は違うのでしょうが、祖国を離れアメリカへ移り、アメリカのダンス界に属するダンサーはとても多く、その中での厳しい競争に勝つ者が世界の舞台に立つのですから、その層の厚さもさることながら、レベルも非常に高く、世界のダンスに君臨していると言っても過言ではないでしょう。
ビクター組の初優勝、日本勢の惨敗
最終日の決戦では、今回、世界ボールルームチャンピオン、アルナス&カチューシャ組の欠場により、新チャンピオンに輝いたのは同じくアメリカのビクター&アナスタシア組。ロイヤルアルバートホールのフロアを見事に使い切り、堂々の優勝を飾りました。以下、アンドレア&サラ組(英)、ドーメン&サーシャ組(独)、ヴァレリオ&モニカ組(伊)、アレクサンダー&イリーナ組(露)、マラット&アリナ組(米)と続きました。
そしてラテンでは、世界チャンピオンのリカルド&ユリア組(米)がダントツの優勝。完成度の高い、完璧なダンスは圧巻です。2位にマウリッツィオ&アンドラ組(加)、3位ステファノ&ダーシャ組(米)と続き、以下、トロス&イーナ(米)、ドリン&マリナ(モルドヴァ)、ニキータ&オルガ(露)となりました。
ファイナルでは会場の雰囲気は最高潮に達し、拍手、スタンディング・オベーションでファイナリストの最高のパフォーマンスを讃えました。ジャイブ終了後には突然胴上げが始まり、引退表明のアナウンスが! この大会をもって引退を表明したのは、準優勝に輝いたマウリッツィオ・ベスコヴォ。次のステージでの成功を期しての引退とのことで、総立ちのオーディエンスに囲まれて有終の美を飾りました。新たな人生での成功を祈りたいものです。なお、アンドラは新たなパートナーシップで現役を続けるとのことです。
さて、日本。アメリカや中国、他の国のダンサーの勢いにのまれたか、全く冴えない結果に終わってしまいました。ライジング部門ではボールルームでセミファイナルに2組、ラテンはベスト24に3組、そして予選会を勝ち抜き本戦であるロイヤルアルバートホールで踊れたのは、ボールルームで橋本剛・恩田恵子組、庄司浩太・名美組、浅村慎太郎・遠山恵美組、そして三浦大輔・美和子組の4組、ラテンではなんと誰も進むことができなかったのです。最終的に橋本組、庄司組のベスト30入りが最高で、同じアジアで大躍進する中国との実力の差をまざまざと見せつけられた形です。
NDCJが立ち上げた日本のプロを強化するプログラム、「チームジャパン」が始動します。日本選手に再び勢いを与えるきっかけになり、世界の桧舞台に送り出していくベースになることを期してのスタートです。来年のこの大会、いやもう少し時間がかかるかもしれませんが、皆さんに嬉しいニュースとしてご報告できるよう、私も「チームジャパン」を支える一人として頑張らなくては、と心する次第です。