「ロンドンインター」直前、英国レポート
新型コロナのパンデミックも英国ではすでに忘れ去られた感じで、ほぼ通常の生活に戻っています。しかしいまだ続く戦争の影響で、ロシアからは英国、EU諸国はもちろん、日本へも入国できない状況が続いています。残念ながら全てが元通りに戻ったわけではありません。早く戦争が終わることを祈るばかりです。
ダンス界では変則的な競技会日程となった昨年の全英選手権やロンドンインターも、今年はかつてと同じシーズンでの開催となり、10月に入りロンドンのスタジオでは世界から多くの選手が集まり、熱のこもったレッスンが繰り広げられています。中国からロンドン入りしている選手は相当数増えており、中国旋風がこの秋もフロアを席巻することは疑いようのないことです。
しかし、コロナの前と今とでは約3年の時間が過ぎており、新たな勢いのある若い選手たちが将来を期待させるダンスを見せてくれています。今注目すべきはポーランドの選手たちの上達ぶりです。以前から若いエネルギーの躍動には目を見張るものがありましたが、新たな生きの良い選手たちが今回のロンドンインターという晴れ舞台で、どのような新風をもたらすかとても楽しみです。この勢いは来年1月のUK選手権や5月のブラックプールでさらに明らかな形となって表れるのではないでしょうか。
一方で、残念ながら戦争の影響でロシアからの選手は出場できない状況は相変わらず、ウクライナの選手も出場できるのはほんの一部にすぎません。帰国後の隔離政策が今しばらく続く台湾からも、未だ選手の姿を見ることはできません。すでに大幅緩和された日本からは、今回その数は増えてはいますが、まだまだかつての勢いではありません。日本の場合、経済の疲弊感が最大の理由なのかもしれませんが…。
何はともあれ、通常の生活が戻った英国ではこのロンドンインターの前後に多くのダンスイベントが開催されます。10月7日の「カールアラン賞」。かつて日本競技ダンス連盟だった時代に故藤村浩作会長が受賞したことのある英国ダンス界では由緒ある授賞式です。続いて8日・9日の両日が「インペリアル選手権」、10日には現在の世界のトップダンサーたちがショーを披露するBDF主催の「A Night of 100 Stars」。そして11日・12日がロンドンインターの予選会とライジングスター部門。13日(木)がロイヤルアルバートホールでの「ロンドンインターナショナル選手権」という流れ。さらに14日はアンドリュー・シンキンソン氏の主催する「London Ball」がインターコンチネンタルホテルで開催され、25日からは場所をブラックプールに移し「WDO世界プロスタンダード選手権」、26日・27日は「The Open Worlds」が昨年に引き続きタワーボールルームで開催されます。
海外で研鑽を積む最大のメリットは、このような世界レベルの選手が集まる環境に身を置き、大いなる刺激を受け、果敢にチャレンジできることにあります。まさに絶好の機会なのですから、自らの限界に挑戦すべく、一心に練習に励んでいただきたいものです。
もちろん日本国内でも、この秋シーズンは活発にダンス競技会が開催されています。そして11月3日開催の「マダム・ローカップ第23回統一全日本選手権」でそのピークを迎えます。WDC登録している国内のトッププロたちが「真の日本一」を決するこの大会。英国やイタリア、ドイツなどで研鑽を積んだ選手たちを、国内でトレーニングを積んだ選手たちがどう迎え撃つか、その熱い戦いが今からとても楽しみです。「飛天」という素晴らしい会場で、素晴らしい音楽と照明、素晴らしいジャッジスタッフ、そして満席の客席がこの競技会の価値を大いに高めてくれることでしょう。
今回は特にダティン・晴代・ロー氏が選手たちの国際大会における活躍を心より応援してくださり、冠スポンサーとしての協賛を戴くこととなり、「マダム・ローカップ」として開催できることになりました。選手にとってこのような素晴らしい大会に出場できる喜びは何ものにも変え難いものです。その喜びを自身のダンスで思う存分発揮していただきたいと思います。
海外での研鑽を積むカップルも、日本国内でレベルアップを計るカップルも、全ての競技ダンサーは目標とするビッグイベントに向け、地味な基本練習から、踊り込みレベルのトレーニングまで、しっかりプランを建ててレベルアップを図っていただきたい、そう切に願います。
(月刊ダンスビュウ2022年12月号掲載)