UK選手権〜世界ダンス界戦国時代の到来!
日本は検査キットもまともに手に入らず、保健所業務の逼迫に加えてコロナ患者用の病床が満杯というニュースを見るにつけ、まだまだ予断を許さない状況にあるのは事実のようです。が、一方では現状を改善していけることがたくさんあるとの話も聞きます。行政もマスコミもただ新規感染者数の増減だけを発するのではなく、感染対策に対する知識を広める報道、お酒を飲んだらワクチンの抗体値が低くなるとか、不織布マスクの正しい装着方法、濃厚接触者の定義や感染しない人の血液データ等など、プラス思考の報道、対策に関する正しい知識をもっと発信してもらいたいものです。
世界的に厳しい状況が続く中、英国では1月17日から20日までの4日間、英国南部の観光都市ボーンマスで「UKダンス選手権」が開催されました。1日の感染者数が10万人を超える中にあっても、大会を開催する意義の大きさゆえに決行。2年ぶりの開催を待ちわびた選手や観客で大いに盛り上がりました。
今大会では特にアマ、プロともにラテンセクションに多くのエントリーがあり、かなりレベルの高いバトルが繰り広げられました。プロラテンではステファノ・ディ・フィリッポがアマチュア時代のパートナーだったアンナ・メルニコワとカップルを再結成。チャンピオンのトローレス・バーガー&イーナ組との熾烈な1位争いを繰り広げ、見事準優勝に輝きました。ロシアのキリル・ベロルコフもニューパートナーのヴァレリアと素晴らしいダンスを見せてファイナル入り。キリルの元パートナーのポリーナも新リーダーのパヴェル・ズベチャイニとキリルの上をいく5位入賞。3位のランジェラ組、4位のフレコータヌ組も絡み、世界のラテン界はカリスマレベルに上がっており、5月のブラックプールでのバトルがますます楽しみになってきました。
スタンダードもアンドレア・ギジャレリ&サラが産後にもかかわらず、素晴らしくキレの良いダンスを披露。勝負はコンペに出続けているチャンピオンのドーメン・クラペツ&ナターシャには一歩及ばずも、その存在感は元チャンピオンの風格。産後の身体が絞れればチャンピオンの座に返り咲く可能性は大と見ます。
英国のドゥサン・ドラゴビッチ&ヴァレリアもそのパワフルなダンス全開で、ロシアのゼリアニン組、イサエフ組、ウクライナのポルタネンコ組を抑えて堂々の3位にランクアップされました。
プロもアマも、スタンダード部門ではウクライナ勢の躍進に目覚ましいものがあります。一時のイタリア、中国の勢いを彷彿とさせる素晴らしいダンサーが生き生きと踊りまくり、この勢いが3年、5年と続くようなら、ウクライナ勢が世界のトップを独占する可能性もあると言わざるを得ません。もっともウクライナは元々、旧ソ連邦の一部。ロシア系のダンサーは、ボールルームの世界でも滅法強い存在なのは昔と同じなのです。
アメリカにしても世界中から集まった多国籍の国で、素晴らしいダンサーは恐ろしいほどの数にのぼります。英国も最近は若手の成長が著しく、中国も依然として存在感を見せています。韓国もラテンにおいては侮れないレベルに到達しており、現在ではどの地域でもプロ、アマともに素晴らしいダンサーが出現し続けています。まさに「世界ダンス界戦国時代到来」の様相を呈しているのです。
果敢に今年のUK選手権にチャレンジした日本カップルは、スタンダードで廣島悠仁組、福田裕一組、大西亘組、佐藤純平組の4組。ラテンでは鈴木佑哉組、野村直人組、三室雄司組、伊藤光組の4組と少しずつ増える傾向にはありますが、日本ダンス界としてのチャレンジというより、個々の単発チャレンジであった印象は否めません。日本がコロナ鎖国している現状、世界に出ていける環境にないとは思いますが、近い将来、日本の勢いが世界的に認められるようになるための辛抱の時期なのかもしれません。
昨年のオリンピック、そして今開催中の冬季オリンピックでも、日本のトップアスリートたちは世界最高のパフォーマンスでメダルを獲得しています。ダンス界でも、素晴らしい活躍を見せる10代20代の急成長は、将来、世界に誇るダンサーをより多く輩出していける大事な素地となります。コロナの終息とともに新たな歴史の1歩を踏み出し、夢と希望に満ちた新しいダンス界に発展させていきたいものです!