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田中英和先生のワールドダンス

コラム&本誌企画

「女性ダンサーへ その4 シャドーダンスの重要性」

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カップルとして男女ともに「五分五分に踊る」ことが要求されるのですが、もちろんリード担当の男性とそれをフォローしていく女性とでは「五分」の意味合いは違ってきます。リードする側は使うフィガーの方向や回転量にパワーやスピード、シェイプの大きさなどを決めつつ、パートナーのバランスとシェイプに責任を持って踊りますし、フォローする女性は男性のフットプレッシャーからの安心安全なサポートを受け、「男性の右手、右ヒップの高さ、アッパースパイン」の関連性のある3点にフォローしつつ、内回りや外回りのムーブメントの中で生き生きと花開く役割があります。

最終的に「五分五分に踊る」カップルバランスが、「1+1=2」ではなくプラスアルファなエネルギーや存在感を生み出し、競技の場ではそのレベルの高さや完成度が勝負のポイントになります。

そのレベルを高めていくためにはどのような練習を繰り返せば良いのでしょう。決まったコレオグラフィーをカップルで踊るだけでなく、やはりリードとフォロー、それぞれのポイントを抑えた効率の良い練習が肝心で、個人のレベルアップを図る意味でも、相手と踊っていることを想定した「シャドーダンス=ソロで踊ること」が基本になると思います。

「五分五分に踊る」能力を高めていくためには、普段からシャドーダンスをする習慣を持ち、その練習の繰り返しの中で足を使うための強さや自由度を高め、スタイルを維持する体幹の強度を増し、内回りや外回りの理解を深め、身体いっぱいに大胆に踊りつつも、緻密に変化できるボディを持つための練習が必須で、これは他のスポーツと全く同じです。

基本的には「ダンスのエッセンス的な動作」の反復が最も効果的であろうと思います。すなわち「前進後退のウォーク」「アウトサイドパートナーでの前進後退ウォーク」「PPやフォールアウェイでのウォーク」「前進スウィングからライズをしながらのブラッシュ動作」「後退ウォークからのヒールターン」などの基本的な動作から始まり、ワルツの「ナチュラルスピンターン〜リバースターンの後半、リバースターンの6歩〜ウィスク〜シャッセfrom PP〜ナチュラルターンの3歩」、フォックストロットの「フェザーステップ〜リバースターン」、タンゴの「ウォーク〜プログレッシブリンク〜クローズドプロムナード」などのベーシックによる数小節のアマルガメーション。これらを繰り返すことでアライメントや基本フットワーク、踊っていく方向や回転量を理解することで、スムースに動けるようになるのです。

女性ダンサーは男性と違い、「フィガーの回転量を増やしたり減らしたり、またその移動量などを変えてはいけない」という「暗黙のルール」があります。しかし、だからと言って全て男性に任せるという気持ちで踊ってもいけません。なぜなら男性は、流れの途中でカップルの衝突を避ける場合などでも、回転量を少し大きくしたり小さくしたり、移動量を増やしたり減らしたりします。ということは、女性はいつも踊られるフィガーの基本の回転量、移動量を理解して練習を積み、フォローする際の「基準」を身体に覚え込ませておく必要があり、男性の咄嗟のリードが生じときでも俊敏にフォロー。これができれば、競技の場でカップルの良さとして見えてくるのです。

2000年に入った頃から中国や台湾、シンガポールなど東南アジアの国々で、子供たちのダンス熱が高まり続けており、これらの国々の競技会は、そのほとんどがジュブナイルからジュニアのソロ競技で占められています。年齢別やクラス別に色々なセクションが設定され、ジュブナイルでもジュニアでも男女混合のソロ競技です。上位に進む男の子も女の子も踊るための身体を持っており、生き生きと、そして伸びやかにクリアなタイミングでしっかりと踊っています。そしてそのダンスの背景には、基本の理解とそれぞれの個性が見え隠れしています。

子供たちのソロ競技は、かつての英国のダンス黄金期を築いた背景でもあります。マーカス・ヒルトン(元世界チャンピオン)もアデールもそうですが、英国がもっとも強い時代を築いた背景には子供たちのソロ競技の歴史があるのです。

男性がシャドー練習をするのは当然のことですが、女性もまたソロで基本動作を繰り返す練習は、上達のスピードを加速させる最も効果のあるものなのです。

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プロフィール

  • 田中 英和

    生年月日:8月9日
    出身:広島県広島市出身
    経歴:1997年2月にアデール・プレストン選手とカップルを組み、5月の全英選手権で日本選手初の第3位表彰台に輝く。「ヒデ&アデール」の愛称で国内外の大会で活躍し、翌98年の全英選手権5位入賞を最後に現役を引退。以降、審査員、コーチャーとして後進の育成にあたっている。また、本誌でも、7年にわたって連載レッスン「ナチュラル・ダンシング」シリーズを執筆し、大好評を博した。
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