今年を振り返って、そして未来に向かって
今年を振り返ってみれば、新型コロナのパンデミックによって、地球上の全てが大きな影響を受けました。そしてそれは終息に向かうどころか、さらに広がっているようにも見えます。感染予防のために「密」を避け、マスク、消毒、換気、検温の徹底が毎日叫ばれています。
ダンス界にとっても、このコロナの影響は非常に厳しいものとなりました。競技会やパーティ、通常の団体レッスンなども、密になる典型として開催が困難になってしまいました。世界中が同様の事態に陥り、来る2021年の年間スケジュールも、果たしてどこまで実行に移せるのか、まだ不透明な段階です。
ワクチンの接種が始まったというのは一筋の明るいニュースではありますが、全世界の人々に行き渡るには相当な時間が必要でしょうし、2021年もこの非常事態が続くと覚悟しておいたほうが良いかもしれません。コロナウィルスが、普通の風邪レベルに扱われるようになるのは、一体いつになるのでしょうか。
そんな中、第1波が落ち着いた頃から野球や大相撲などは感染予防を徹底して開催され始めました。ダンス界でもこの秋口あたりから、無観客で大会を開催する動きが始まっています。踊る選手はマスク着用が義務付けられ、大会を運営する側も最小限の人数で蜜を避け、大会の模様をインターネットのオンラインで配信するというもの。11月の「バルカーカップ」「三笠宮杯」、今月の学連「冬全」などもこの形で開催されました。
インターネットではライブ配信を見るだけでなく、観戦しながら同時に応援メッセージを送るという技も可能で、見ながらにして参加をするという「新たな臨場感」もこのコロナ禍における新たなスタイルと言えるでしょう。無観客でオンライン発信していく競技会は、2021年にはもっと増えていくと予想されます。
世界では今年5月に開催予定だった「ブラックプールダンスフェスティバル」も、パンデミックにより開催中止に追い込まれましたが、この秋シーズン、ZOOMというアプリを使って世界の選手、審査員が参加するライブ競技会が開催されました。選手はそれぞれの国のダンスフロアで、ZOOMから流れてくる音楽で同時に踊り、審査員も自身のインターネット環境、自身のコンピュータ画面で同時に審査するという形だったようです。ただこれは、国によってインターネットの質にムラがあり、また1ヒートに10カップルが同時に踊った場合、パソコンの画面で見るカップルのサイズが非常に小さくなるなど、ジャッジするのが非常に難しかったと聞いています。
ただ、コロナ禍だから何もしないというのではなく、世界のダンサーたちのために可能なことを模索し、インターネットで競技会を開催することは、今できるベストチョイスと言えるかもしれません。また、You Tube上に投稿されたダンス動画を見ながら、選考するダンス競技会も開催されました。夏に開かれた「BOYS & GIRLS ソロダンスコンテスト」、この秋には2回目となる「フューチャーズカップ」と銘打った競技会が開かれ、多くの若いダンサーたちが参加し優劣を競いました。
私もこの2つのイベントに選考員の一人として参加させていただき、若いダンサーたちの踊りを拝見しました。伸びのあるムーブメント、シャープなリズム感、将来の更なる上達を期待させる才能を見るにつけ、このような大会を企画された主催者の方々の、熱い気持ちと行動力に感服する次第です。また、若い将来のあるダンサーにとっては、同じフロアでライバルたちと競い合えない現状に、なかなか気持ちが燃えない一年であったかもしれませんが、自分自身のダンスを地道にレベルアップさせるこのようなチャンスに果敢に挑戦したことを、大いに評価したいと思います。
2020年は「新たな方向性」に舵を切った、人類にとって、とても大きな節目の年でした。これまでのバランスが壊れたことで、今の環境が今後さらに厳しくなるかもしれません。ですが、ダンスが、ダンス界がどのようなスタイルに変わっていこうとも、世の流れにうまく適合しながら、何よりもダンスを愛する私たちが「踊ることの楽しさ」「踊れる喜び」をなくさないよう、大いに前向きに進んでいこうではありませんか。
1年間お付き合いいただき、ありがとうございました。来年、2021年が終わる頃、皆さんに最高の笑顔が戻っていることを祈りながら…。