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田中英和先生のワールドダンス

コラム&本誌企画

バルカーカップ2020

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11月3日、待ちに待ったビッグイベント「バルカーカップ統一全日本ダンス選手権」が開催されました。当初は開催の可能性が危ぶまれていましたが、メインスポンサーのバルカー社の理解と多大な協力により開催できたのです。このコロナ禍で沈滞ムードのダンス界にとってこれほどありがたいことはありません。
 もちろん開催にはコロナ禍の中、主催者側には出来る限りの感染予防措置を徹底することが条件となりました。出場選手側も、ボールルーム・ラテンともに昨年度のセミファイナリスト12組に限定し、セミファイナルも6組づつの2ヒート制。出場条件としてPCR検査での陰性証明の提出、場内では当然のこと競技中でもマスクを着用することなどが徹底されました。「新しい日常」におけるダンス競技会開催の一つの例として、大いに参考となる大会になったと思います。
 本来、選手のパフォーマンスは満員の観客の大声援とともにヒートアップし、会場の熱気が渾然と一体になることで最高レベルに達するもの。オーディエンスにとっても、1次予選から選手間の緊張感の高まりに入っていくことが「競技会を100倍楽しむ」醍醐味です。しかし今大会は、これまでとは全く趣を異にした競技会となりました。1次予選が即準決勝、テレビカメラは選手を追い、そんな中で上位6組を選ぶ厳しい目で審査される緊張感。日本を代表する選ばれしトップ12組は、この大会に出場できなかった全選手を代表して、渾身のダンスを披露してくれたと思います。
 スタンダードの優勝は連覇を続けるチャンピオン橋本剛・恩田恵子組。昨年同様に浅村慎太郎・遠山恵美組が準優勝と順当に表彰台へと上りました。3位争いは昨年5位の森脇健司・的場未恭組と昨年6位の福田裕一・エリザベス組が大接戦を演じ、森脇組が見事3位へ大躍進。福田組も4位へとランクアップを果たしました。そして5位、6位は若手の台頭を見ることができました。若代愼・辰巳友莉亜組が初ファイナル第5位。ファイナル最後の席へは同じく若手の柴田悠貴・松原麻美組が大躍進を遂げました。
 惜しくも今年ファイナルを逃した小林恒路・赤沼美帆組、樋口暢哉・柴田早綾香組もまた巻き返しを図って欲しいものです。本多龍士・戎野紗与組、西尾浩一・下田藍組も得意種目をさらに伸ばすことでチャンスは大いに増えるのではないでしょうか。そしてこの大会を最後に引退した中嶋秀樹・佐藤愛子組。今後の新たなステージでその経験を生かしていただきたいと思います。昨年4位に入賞した廣島悠仁・石渡ありさ組は、足の故障のために欠場。早い回復を祈ります。
 ラテンでは増田大介・塚田真美組が連覇を達成しました。そして急成長著しい鈴木佑哉・原田彩華組が存在感のあるパワフルなダンスを披露し、正谷恒揮・齋藤愛組を破り見事準優勝を飾りました。3位となった正谷組も今後まだまだ日本を牽引していく存在。ライバルとのバトルは将来のさらなるインプルーブに繋がると思います。4位には昨年同様、野村直人・山崎かりん組が入賞。運動神経の非常に長けたダンサーで、上位を虎視淡々と狙う絶好のポジションにつけています。5位には昨年より一つランクアップした森田銀河・小和田愛子組、そして6位には村田雄基・麻里亜組が同じくランクを一つ上げての入賞となりました。
 セミファイナリストを見ますと、須藤達矢・庄司まゆ組、瀬内英幸・斎木智子組、岡本圭祐・塚越あみ組など非常に魅力のあるダンスを披露しています。竹内大夢・中島由貴組も日本のトップダンサーの1組として定着してきました。「立つ」ということの強さを伸ばし、さらに発展していって欲しいものです。今回は残念な結果でしたが清水基允・丸市美幸組、瀬底正太・堀川真琴組も存在感を発揮し、今大会を盛り上げてくれました。
 ダンスファンの皆さんにとっても待ちに待ったこのビッグイベント。嬉しいことに今大会もJスポーツによるライブ放映があり、年明けの1月11日にテレビ東京・テレビ大阪の地上波で放送されることが決まっています。文化としてのダンスをもっと世に広め、スポンサーとなる企業やマスメディアにどんどん取り上げられるよう、組織も選手も皆一体となってレベルアップを計らなければなりません。でもその前に、今年バルカーカップが開催できたことを、まずは喜びたいと思います。ありがとうございました。

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プロフィール

  • 田中 英和

    生年月日:8月9日
    出身:広島県広島市出身
    経歴:1997年2月にアデール・プレストン選手とカップルを組み、5月の全英選手権で日本選手初の第3位表彰台に輝く。「ヒデ&アデール」の愛称で国内外の大会で活躍し、翌98年の全英選手権5位入賞を最後に現役を引退。以降、審査員、コーチャーとして後進の育成にあたっている。また、本誌でも、7年にわたって連載レッスン「ナチュラル・ダンシング」シリーズを執筆し、大好評を博した。
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