オンラインを利用して
コロナの感染拡大が止まりません。地域によっては緊急事態宣言が発令されている現状では、従来のスタイルでのダンス競技大会の開催は無理と判断するのは仕方ないことですが、一旦は秋シーズンの競技会が開催できそうな雰囲気から一転、その予定がことごとく中止決定されていく状況に落胆の色を隠すことができません。
3密を避け、マスクやフェイスシールド着用での競技会を開催したとしても、出場組数や観客動員の大幅な減少は避けられず、大会を運営する側にとっても大きな損失が出ることは明らか。安心して積極的に競技会が開催できる環境が整うのは、ワクチンや特効薬が一般に広がるまで無理なのかもしれません。
その環境が整うのをただ待てば良いのでしょうか。それこそ、そんなことを悠長に待っていてはダンス業界、ダンス関連産業は消滅してしまいます。場所を変え、内容を変え、出来るスタイルを模索して、皆で協力して開発して行かねばなりません。競技会を開催するにあたって最も経費がかかるのは会場費です。その経費を抑えることがまず基本だとするなら、やはりインターネットを使っての開催が、現在真っ先に考えられるものです。
先月号で「BOYS & GIRLSソロダンスコンテスト」のことを紹介しましたが、このイベントは一人ひとりが踊ったダンスを録画し、それをインターネット上で見ることで選考していき、予選から決勝へと進めていくものです。現在は、スタンダード種目で予選会が進行中です。スタンダードは200人ものエントリーがあるそうで、大いに盛り上がっています。そして下旬からは高校生&大学生&20代限定でのオンライン競技会「フューチャーズ・カップ」が始まるとのこと。これはカップルで踊った動画での審査のようですが、これも大熱戦が繰り広げられるのではないかと思います。
先日、8月8日ですが、ロシアでは通常のプロアマ競技会をオンラインでライブ配信し、それを審査するコンペが実際に行なわれました。コンペ会場にはロシアの審査員が立ち、外国人審査員はインターネットで審査に参加するというもの。ところが途中でインターネットがフリーズしたり、カメラマンが特定のカップルだけを追ってしまったり、定点で固定した時には画面からダンサーが消えたりと、自分目線で審査をすることができず、全くフェアな運営とは言えないものだったようです。通常の競技会をライブで行なうことは、インターネット環境も含め、技術的に相当難しいものであろうと思います。
が、それにしても「新たな日常」としての生活の中でダンスの競技会を考えるなら、インターネットを利用した競技会が中心になっていくのではないでしょうか。ライブでの競技会運営は難しい側面があるかもしれませんが、すでに開催されている動画を録画してのものであるなら、オンラインでの競技会は大いに「あり」と賛成します。もちろんエントリー組数や種目制限などの工夫も必要になるでしょうから、100組、200組出場のビッグコンペは難しいと思われます。ですが、その分、1セクションのエントリーを絞ったりセクションを増やすなどで、ダンサーには踊れるチャンス、ジャッジをする側も仕事ができる場が増えることになります。とにかく踊れる場、競技のチャンスが増えることは絶対にプラスになります。
インターネット配信を利用したダンス界の新たな発展に期待!
競技会以外でも、プロアマのショーケース(デモ)をインターネットでライブ放送するイベントが企画されています。金光進陪氏とアレッシオ・ポテンジアーニ組の主催で、司会進行にマーカス・ヒルトンMBE氏を招き、プロアマカップル35組限定でライブ出演するというもの(ニュース欄でも詳報)。特別ゲストにエスパン・ソルバーグ氏やアンドリュー・シンキンソン氏らもコメンテーターとして参加するというなんとも豪華なイベントです。生徒さんたちのモチベーションが上がり、プロとしての仕事の場としても素晴らしいイベントであろうと思います。
毎週のようにヘアメイクをし、ドレスアップして競技会場やパーティ会場に向かうのが当たり前だったものが、ドレスを着ることも燕尾服に袖を通すこともない日々は、モチベーションの維持を非常に困難なものにします。安心して踊れる場、競技のチャンスを提供する媒体としてインターネットは非常に有効なものですから、今の時代、これを効率よく利用し、内容をさらに充実させる工夫をしたイベントが増えることを期待しています。インターネットを利用したウェブ・レッスンも含めて、今後のダンス界の新たな発展に貢献することは間違いことだろうと思います。