今、私たちにできることは・・・
案の定、緊急事態宣言が延長されたものの、世の中には早くも収束に向かって動いている雰囲気が漂い始め、外出自粛ムードもなんとなく緩んできているように感じます。政府による明確な指針も発表されず、自粛要請も補償が伴わない状況では、経済的な危機に耐えられない、自粛に疲れ果てた人々は基本のマスクや手洗いをして、適当なソーシャルディスタンスさえ気をつけていれば安全だからと、経済活動を再開する動きが見て取れます。
実際に、明るいニュースが日々報道されるようになっているのも事実。ワクチンの開発、実用化が急がれる中、アビガンやレムデシベルなどなどの薬の承認や投薬が始まっているとのこと。これは安心への情報ではありますが、ダンス界としてはまだまだ手放しで喜べる状況ではありません。5月末までの自粛要請が解除されることがあるとしても、すぐにダンス教室の通常営業や、競技会やパーティなどの即再開というわけにはいかないでしょう。実際、今年度の競技会開催の目処は全く立っておらず、7月、8月に全国で多く開催される予定だった夏のダンスパーティも、今年は軒並み中止に追い込まれています。今現在は、不十分ではあっても政府や自治体からの支援、支給を利用し、何とか乗り切っていく我慢と努力が必要なときなのです。
収束をいち早く迎えたかのように報道されている韓国でも、普段通りの生活に戻った途端に新たな感染者のクラスターが発生したと報道されています。ちょっとした気の緩みが感染の再燃を招くのが、この新型コロナウィルスの感染力の強さ、恐ろしさを証明しているのです。
さて、そんな中にいるダンス界ですが、私たちも重い腰を上げて、そろそろ何らかの動きを始めなければならないタイミングにいるのではないでしょうか。実際に全国統一選手会のABDCは、自粛が始まった後の全国の選手の生活状況をアンケート形式でいち早く取りまとめ、プロ組織に現状を知らせるレポートを提出しています。
私たちのダンスはエンターテインメントの世界に属するビジネスではありますが、同時に世のダンス愛好家の方々の健康や福祉にも貢献するすばらしい側面もある、大いに誇れるものです。が、ダンスは室内で、カップルが直接手を触れ、ボディも近いまま踊るスタイルであり、世には「3密」の代表格に挙げられても仕方ないところ。たとえ社会生活における自粛が緩和され始めたとしても、ダンスビジネスが真っ先に解除されることは難しいのではないかと思います。
しかし、だからと言って、解除のタイミングをただ待つだけというのも、あまりに無策です。今、私たちは私たちができること、また、しておかなければならないことは何かを考えて行動に移さなければならない時期にいます。国に対してダンススタジオへの補償、プロの指導者やダンサー個人個人への補償を訴えることもあるでしょう。ダンスの世界をサポートしてくださる企業や個人に、皆様からの何らかの補助やクラウドファンディングを実行することもありかもしれません。
危機的状況の今こそ、ダンス界全体が統一した考え、統一した動きを世に知らしめるべき!
日本の場合、プロ組織は一般社団法人NDCJというプロ3団体の代表による組織がありますが、この組織はバルカーカップ統一全日本選手権などのビッグコンペを開催することや国際大会を承認することがメインの組織です。ということは、今はNDCJではなく、以前より政治家や省庁、各業界団体などと関係のある公益財団法人JBDF、公益社団法人JDC、NPO法人JCFの3団体がそれぞれに持つ強い関係性を活かして、3団体連名でダンス界全体として国や政府に訴えかける動きが大事なのではないかと思います。
もっとも、国への訴えかけがそのまま生活の補償に展開することは、これまでの政府の対応を見ていれば、現状ほぼ不可能であることは百も承知です。が、国からの支援を期待することよりも、ダンス界が統一した考えを持ち、統一した動きを世に知らしめることが大事なこと。この危機的状況を乗り越えたときに、ダンス界が一つになり、新時代を構築する下地となっているよう、今こそ頑張って統一の動きを進めていくべきだと思います。
組織が歩み寄り、国や世間に訴える姿勢を鮮明にしていくこと――。この様な考えに同調するダンス人がもっともっと増えていくこと、そして協調と協力を大事にし、世の理解と協力、支援の動きが本格化することが、今求められるもっとも大事なことなのではないでしょうか。