「緊急事態宣言」発出の今
全てのことが予定変更となってしまいました。さあいよいよと期待が膨らんだ東京オリンピック・パラリンピックも来年度の開催に延期が決定し、プロ野球、ゴルフ、サッカーなどメジャースポーツも私たちのダンスの競技会も、全てが開催不能に陥ってしまいました。延期決定のイベントは果たしていつの開催となるのでしょう。
世界で蔓延してしまった新コロナウイルスは多くの国々の医療崩壊を招くまでに拡大し、都市封鎖、外出禁止措置が続いている現状を鑑みれば、全ての社会活動が厳しく制限されるのは当然のことです。人の流れを止めることしかこの事態を終息に向かう手立てはないのでしょう。ピークを抑えつつ、このウイルスに対するワクチンや特効薬が開発されることを辛抱強く待つしかありません。日本でも7割から8割の人との接触を減らすべく「緊急事態宣言」が政府から発出されました。5月6日までの措置ということですが、感染爆発が進む中「命を守る」ためのものだと理解しています。
そのためにも様々なジャンルにおいて経済活動を自粛、休業要請がなされています。しかしこれは大変な影響を及ぼすことは明らかで、休業要請をされても補償が十分とは思えない現実もあります。緊急事態宣言が発出された都市はロックダウンではない以上、あくまで自粛のレベル。在宅勤務ができない職種など通勤電車は未だ混雑している状態が見られ、まだまだ密集状態が改善されていないという事実もあります。
ダンスにおいても3密(密閉、密集、密接)に抵触してしまう場面は非常に多く、多くの場面で自粛要請にいち早く対応しています。不特定多数が集まるダンスホールやダンスパブなど、そして一般に言うダンスパーティも、この環境下では開催は不可能です。ダンス愛好家、競技選手、ダンス事業に携わるもの全てが、万全の対応を取りつつ感染拡大阻止に協力すべく自粛はさらに継続していかなければなりません。
オリンピックイヤーということで日本武道館での開催ではなく、史上初めて大阪での開催が予定されていたJBDF主催の「日本インターナショナルダンス選手権」も開催中止が決定されました。その直前、5月末に開催予定であった世界最高峰のブラックプールダンスフェスティバル(全英選手権)は、8月末への開催日程延期が決定されてはいますが、英国にしても全世界のこの悲惨な状況が続くとなると、秋シーズンの開催も見送らざるを得なくなる可能性も否定できません。
春シーズンの競技会やパーティを夏以降に延期する決定をしている主催者にとって、非常に不安な気持ちを抱きつつ毎日を過ごさなければならないのは大変なストレスです。全世界に多大な不幸をもたらしているこの新型コロナウイルスの感染拡大がこのまま続いてしまったら、日本での緊急事態はさらに伸び伸びになり、経済はもちろん、人の心まで蝕んでしまう、私はそれを一番危惧するものです。
ダンスが踊れない今こそ、歴史を振り返って「今を知り、将来に備える」
ダンスは、そんな時でも、私たちの落ち込む気持ちを和らげてくれるものです。例えば、日本インターナショナル選手権にしても今年で41回目を迎えることになっていたのですが、過去40年間の激闘のダンスシーンを見返して、チャンピオンやファイナリストの移り変わり、ダンスのスタイルやドレスの変遷などに興味を持つことも非常に興味深いものではないでしょうか。実際にフロア上で踊るだけでなく、映像を見るだけでもいろんな側面で勉強になるのは自明の理です。
今ではYouTubeなどで、かつてのビル&ボビー・アービン、ピーター・エグルトン&ブレンダ、ウォルター・レアード&ロレインなどカリスマチャンピオンから歴代のグレートチャンピオン、グレートダンサーの動画を見ることができます。日本でも日本インターをはじめ、10ダンス、セグエ選手権などのVHSビデオやDVDなど秘蔵のビデオを所有している方も多いのではないでしょうか。そして、今の最前線のダンスも同時に見ていくことで、その違いは明らかになるでしょうし、逆に言えばそこにある共通点も発見できると思います。
「温故知新」という言葉があるように、今できることの一つは、歴史を振り返ってみることではないでしょうか。歴史の勉強は今を知ること、そして将来に備えることでもあると聞きます。何も昔は良かったとか、ノスタルジックな思いにふけることを言っているのではありません。踊れる場がないことはとても悲しいことですが、次に踊るときを楽しみに、時間のある今のうちにそんな時間を持つことも大事なのかもしれません。
この悲劇的な時代を少しでも早く乗り切り、また普通に踊れることの幸せがやってくることを信じて、今は辛抱をするしかありません。皆さん、どうか安全にお過ごしください。