■バルカーカップ統一全日本戦
11月3日の日曜日、今年度の真の日本チャンピオンを決める「バルカーカップ第20回統一全日本ダンス選手権大会」が華々しく開催され、JCF、JDC、JBDF所属のトップダンサーたちが華麗な競演を繰り広げました。海外から招聘された外国人審査員も豪華なメンバーであり、この大会の優勝者には1000万円、そしてファイナリストにも高額賞金が約束されているとあって、果敢にチャレンジする選手たちの意気込みは相当なものでした。
ラテンセクションでは7組のファイナリストが選ばれ、その中で優勝の栄冠を手にしたのは増田大介・塚田真美組。日本のトップにいながら、なかなか優勝に手が届かなかったこの組が、優勝のコールに感無量の表情を見せたあのシーンは感動的でもありました。彼らの優勝は、そう簡単なことではなかったと思います。準優勝の正谷恒揮・齋藤愛組、第3位の鈴木佑哉・原田彩華組の猛追は明白で、ファイナルでの大接戦に審査をするジャッジも大変なプレッシャーを感じたのではないでしょうか。
4位は野村直人・山﨑かりん組。海外のジャッジからは相当な高評価を得ており、来年以降の大躍進に期待を抱かせるダンスを披露していました。5位には清水基允・丸市美幸組、6位森田銀河・小和田愛子組と続き、7位であったものの村田雄基・麻里亜組も健闘よく、日本を代表するファイナリストの座を射止めました。
セミファイナルには瀬内英幸・斎木智子(8位)、竹内大夢・中島由貴組(9位)、須藤達矢・庄司まゆ組(10位)、瀬底正太・堀川真琴組(11位)、岡本圭祐・塚越あみ組(12位)が入り、日本でも新旧交代の流れは進んできているようです。
スタンダードでは6組のファイナリストによって競われ、優勝は橋本剛・恩田恵子組。連勝記録を5に伸ばしました。準優勝の浅村慎太郎・遠山恵美組もジャッジから1位のマークをいくつか奪取するなど、ソフトで伸びやかなダンスでとても良く踊っていました。が、結果的には世界ランクで上をいく橋本組の後塵を拝することになりました。第3位には小林恒路・赤沼美帆組が安定した勝負強さを見せて表彰台へ。4位には今年の急成長の筆頭である廣島悠仁・石渡ありさ組が入り、以下、5位森脇健司・的場未恭組、6位福田裕一・Elizabeth Grey組と続きました。
セミファイナルには樋口暢哉・柴田早綾香組(7位)、本多龍士・戎野紗与組(8位)、柴田悠貴・松原麻美組(9位)、若代愼・辰巳友莉亜組と西尾浩一・下田藍組(10位タイ)、中嶋秀樹・佐藤愛子組(12位)が入賞。僅差のレベルに良いダンサーがひしめき合っている現状を見れば、まだまだしばらくファイナルの座を狙って混戦が続くことが予想されます。
世界に伍して戦うには、肉体的、精神的「弱さ」に打ち克つこと。
今大会の成績により、各セクションの上位2組が来年度の世界選手権日本代表に決まったわけですが、ここ数年の日本選手の海外での実績からすると、現在の世界のトップクラスに伍して戦うにはまだ弱いと言わざるを得ないのが実情です。「弱い」という表現は肉体的なことがまず考えられ、ジムなどでのトレーニングが必要な場合もあるとは思いますが、それと同時に「理解の実行とその反復」によって鍛えられるものであり、「弱い」とするならば目的を持った強化トレーニングと理解からくる単純動作の繰り返しの練習、トレーニングを総合的に取り組む必要があると思います。
「信じることの弱さ」があるのも事実。精神面での「弱さ」。実はこれが一番の問題なのではないかと考えます。故田中忠先生(元全日本ボールルームチャンピオン)の逸話にこんな話がありました。「彼がChange of Directionというフィガーの練習を繰り返したフロアは、彼のフットプレッシャーとその繰り返しによって抉(えぐ)られていた」と。それほど繰り返すことで真剣味が増し、真の世界ファイナリストに上り詰められたのだと言われたものです。忠先生のレッスンでは、こんなことも言われました。レコードをかけて、そこから流れてくるダンスバンドの音楽に、「このバンドは何人で演奏しているんだ?」「10数名で演奏していると思います」と答えると、「その10数名は君のために今、一生懸命演奏している。君はそのバンドメンバー全員が一生懸命演奏してくれているのに見合うだけのダンスをしているのか!!!」と。熱い先生でした。
人生をかけたダンスライフ。やると決めたなら、とことん拘ってダンス道を極めるまですべし!!! 私はそう思います。国内で雌雄を決するだけの勝負ではなく、世界レベルで競われるバルカーカップであることを期待するものです。
がんばれニッポン!!!