2015から2016へ
ダンス界のみならず、各界で少子高齢化や景気の不透明感の影響を少なからず受けている今の日本。その背景に危機感を抱く各界のオーガナイザーは、次世代の取り込みに相当な力を注いでいます。野球、サッカー、ラグビーなどでは子供たちのクラブを創設し、次世代の育成に勤しんでいます。もちろんダンス界もその流れに遅れまいと、各団体それぞれにジュニア開発の部門で将来のスター作りに懸命に取り組んでいます。
将来の展望を明確にし、組織として取り組んでいくことは最も重要なプロジェクトの一つであるのは自明のことですが、現在の状況を改善していくこと、中でも、プロ団体の統合が先送りされてきた現実を、早急に統一性のあるものにしていかなければ、今の若い世代にとって近々の目標を明確に抱くことは難しいのではないでしょうか。
ここまでダンス界を引っ張ってきたのは紛れもなくプロの組織であり、世界に伍して戦ってきたプロダンサーたちの存在が将来の成功を夢見る次世代の活躍に繋がり、今のプロ大国ニッポンを作ってきたのです。
今年を振り返ると、プロ最大手のJBDFが求心力を失うこととなり、従来成功を収めてきた全日本クラスの大会も非常に残念な結果となってしまいました。競技会に足を運んで頂き、絶大なサポートをしてくださってきたダンスファンの皆様にそっぽを向かれたことは大失態であり、その舵取りに失敗した責任はとても大きいと言わざるをえません。
JBDFが掲げた方針は、もちろん将来を見据えてのことであるのは重々承知の上ですが、であるなら、その話を早い段階でオープンにし、皆が納得できる進め方ができなかったのでしょうか。個人的な仲違いが大組織の運営の舵取りを誤らせることに繋がったのであるなら、なんと情けないことか。残念ながら、もう後戻りすることができないところまで来てしまったようです。今後は、早期に新たな希望に溢れる組織作りが急務となります。一つの方向性を打ち出し、魅力ある競技会を開催し、日本の選手が伸び伸びと活躍できる環境を作らなければなりません。
と同時に、プロの競技会の有り様を変えていく動きが加速していることも報告しておかなければなりません。JDC、JCFとJBDFからの分派であるJBDCの3団体がNDCJ(National Dance Council for Japan)という組織に集まり、NDCJ主催で11月3日、グランドプリンスホテル新高輪・飛天で「バルカーカップ統一全日本ダンス選手権」が開催されました。この大会は日本のプロ統一への先駆けとしての大会で、今年で16回目を迎えました。が、今年の大会は、これまでの競技会とは一味違った競技会であったように思います。日本のトッププロが真の日本チャンピオンの座を競う最もレベルの高い競技会は、スポーツとしてのダンスという側面だけでなく、最高にゴージャスな舞踏会をイメージされたものとして開催され、これまでの競技中心の考え方で盛り上がったダンス文化が、さらに次の次元に発展する良い一例となったように感じます。
競技会でありながら、参加者すべてにドレスコードが徹底され、舞踏会で自らもお洒落にその時間と空間を楽しむということは、競技ダンス界のスター選手を育成するだけでなく、日本におけるダンス文化をさらに成熟させる可能性を大いに示唆したと言えます。
来年も11月3日に「バルカーカップ」として統一全日本戦が開催されますが、また一段と格調の高いイベントとなるのではないでしょうか。高額賞金も選手のレベルアップに貢献することは間違いなく、2016年の「一年の計」に統一での成功を掲げる選手も多いのではないでしょうか。
また、来年2月のアジアオープン、9月のギャラクシーといった日本武道館で開催されてきたJDC、JCFのメイン大会が、統一組織となったNDCJ主催で開催されることに決まりました。各団体の所属選手だけでなく、WDCという世界組織に登録している選手は皆参加できるのです。世界オープンとアジアクローズなどのセクションがあり、世界やアジアの強豪を交え、且つ、日本のトップクラスの選手が一堂に会しその技を競う機会が増えることは、日本のダンスレベルを押し上げることに大いに貢献するでしょう。そして、この方向性は、各スポンサー、メディアにも注目していただける素晴らしいチャンスになると思います。
NDCJ主催だけでなく、NDCJ公認競技会も各団体で開催されることになっています。世界のトップクラスの審査員を招いての国際大会は選手のモチベーションを高め、熱い戦いは観客動員にも繋がること間違いなしです。
2016年は、そういった意味で非常に大事な1年になるのです。プロの活性化がきっかけとなり、将来の若きスターたちの目標になる、その道筋を作っていくのですから。
さあ、2015年もあっという間に終わりを迎えました。今年も一年ありがとうございました。そしてまた2016年、このコーナーで皆様とお会いできますことを楽しみにしております。