スウェイの理解を深める
3月最初の週末はJBDF主催「スーパージャパンカップダンス」が開催されました。この大会は選抜選手権、ライジングスター部門、シニアやジュニアなどの様々なカテゴリーで競われる全国大会の一つ。各セクションで熱いバトルが繰り広げられましたが、この大会で最も注目される部門は何と言っても「セグエ選手権」です。
初日はラテンセグエ。3連覇を果たした増田大介・塚田真美組も非常に難易度の高い作品にチャレンジ。チャンピオンであっても果敢にチャレンジする姿勢はさすが。今後とも大いに日本を引っ張って行って欲しいと願います。この大会を最後に惜しまれながら引退を表明した西井雄紀・春名梓組のセグエも、彼らの身体能力の高さに音楽性とテーマの独自性が明確に表現されており、とても好印象を抱きました。彼らにとっても、最後を飾るにふさわしい思い出に残るダンスではなったのではないでしょか。そして、最近頭角を現してきた野村直人・山﨑かりん組のダンスも、日本人離れした存在感を発揮した好作品。フロアを支配する圧巻のパフォーマンスにこの組のレベルの高さを見た思いです。
二日目はスタンダードセグエ。廣島悠仁・石渡ありさ組は端正なスタイルに無駄のない美しいムーブメントを持った美男美女のカップル。テーマもクリアで、私は評価したいセグエの一つでした。選抜選手権で第3位入賞を果たした福田裕一・エリザベス グレイ組のセグエは、今年もちょっと怖〜いテーマではありましたが、ダンスの力強さとストーリー性のバランスがとても良い作品でした。若代愼・辰巳友莉亜組の作品も、彼らの良さを存分に出していたのではないでしょうか。もちろん優勝、準優勝を飾った橋本剛・恩田恵子組、浅村慎太郎・遠山恵美組のダンスは、美しいスタイルを失うことなく、他の追随を寄せ付けませんでした。そして、この大会を最後に引退表明した臼井一史・恵組も完全燃焼の素晴らしい作品を踊り上げ、第3位に入賞! 有終の美を飾ってくれました。
奥行きのある立体的な「スウェイ」とは?
さて、スタンダード部門のスウィングダンスでの話になりますが、このダンスのムーブメントにはライズ&フォールに伴う「うねり」のある入れ替わりがあり、これが踊りをとても魅力あるものにしてくれます。端正なスタイル、美しいポジションを持ったカップルが繰り出す無駄のない「うねり」は上品であり、その瞬間に観る側に夢を与えるのです。好印象を与えてくれたセグエは、テーマや音楽、衣装の趣味とともに、意外性のあるフィガーやコレオグラフィーの展開があり、その急展開を踊りこなすに十分なダンス技術の正確さと大胆さがあるのです。
それは「スウェイ」というテクニックが大きく関わっており、合理性のある美しくも力強いダンスのためには、スウェイがどのようなものであるのかを理解し、実行することが大事と言えます。
一般に「スウィングの動作がターンに展開し、最後にスウェイが生み出される」と言われています。ワルツのナチュラルスピンターンの男性の動作で言うと、第1歩目の右足前進では右回転を生み出すためのCBMの動作が始まります。その瞬間にはまだ右へ傾くスウェイは始まっていませんが、その第1歩から2歩目が前進動作の延長線上に横への加速を持ってスウィングされることで右スウェイが生まれ、3歩目に両足がLODに背面しながらクローズされるまで横方向への「伸び」として継続されるのです。スウェイの始まりはその第1歩の上を通過する瞬間であるということです。
そして後半のスピンターンを踊るときには、右スウェイを水平に戻さなければなりません。ではそのスウェイはいつ水平に戻るのでしょう。答えは第4歩、左足がLODに後退する動作の途中、いわゆる「中間バランス」と呼ばれる瞬間です。ロアをする動作における膝の運動、後退へ送っていく動作、半回転を生み出すに十分なCBM、これらをバランスよく行なった上で、スウェイが水平に戻るタイミングを掴む必要があります。これによって前進する女性が自信を持って加速のある外回り動作を行なうことができるのです。
また、スウェイとはボディサイドを緩める動作ではなく、実際には「傾いて見える動作」と理解しましょう。前進の回転量が1/4、1/8とあっても横方向への動きを変えないのですから、上体の横への移動と足元の回転量の誤差により立体的な奥行きが出てくるのです。この時、前進する男性のボディが右へ緩むことなく、頭のてっぺんも極端に傾くことがない「立体的なスウェイ」となるのです。
このように3次元的な奥行きのあるスウェイで踊っているカップルが、フロア上で目に飛び込んでくるのです。スウェイの観点でダンスを見ることは「ダンスを10倍楽しく見る方法」でもあり、ダンスの良し悪しが興味深く見えてくること間違いなしです!