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田中英和先生のワールドダンス

コラム&本誌企画

1年半先を見越して

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新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、今年も例年通り、国内はもとより世界各地で競技会が盛んに開催されます。所属する地域の競技会情報はもちろんのこと、全国レベルの大会、他団体も含めた国際大会、そして全英やインターナショナル、アジアツアーなど海外でのビッグコンペなど、競技会の日程や会場などは今やインターネットで全て調べ上げることができます。「そんなコンペがあったの? 知らなかった・・・」ということのないよう、前もって調べておく必要があるのは当然のことです。

私がダンスを始めた頃は、「ダンスと音楽」という専門雑誌が唯一の情報入手手段で、それ以外はボールルームダンスの本家本元・英国へ留学されたことのある日本のトッププロの先生のこぼれ話を聞くことくらいしかなかったのです。そのツテすらなければ、英国をはじめとした海外の情報は皆無に等しかったのです。

そして当時は、プロとして英国に行くには、東京に本部のあるNATD(日本社交舞踏教師協会)という教師協会の教師資格を取得した、プロA級選手にしか許されていない時代だったのです。

当時アマチュアだった私は、プロ資格の制約がなかったので、大学を出たその年の8月にロンドンに行くことができました。それが英国でダンスの研鑽を積むスタートになりました。今から34年前、1984年のことです。この時、英国へ行った目的は、とにかく現地でのレッスンがどのようなものか、とりあえず経験し、地理を覚え、現地の生活環境を知ることが第一でした。要するに情報収集です。今のように携帯もインターネットも何も無いのですから、人づてに聞くより、自ら体験して情報を得ることにしたのです。

34年前の英国は来てみてビックリ。世界の3大都市、ロンドン、パリ、ニューヨークの筆頭に挙げられていた時代でしたが、いろいろな事柄が民営化され始めたばかりの英国は衣食住、全てにおいて日本とは違いすぎて相当困惑したことを覚えています。一つ例を挙げれば、街にある公衆電話。電話という電話は全て小銭狙いで壊されおり、ほとんど使いものにならない悲惨なもの。日本まで最短4日から1週間かかる国際郵便と間借りをしている家の電話が唯一の連絡手段で、その家の電話を使わせてもらうのも気を遣います。それこそ緊急時にのみ、お願いして使わせてもらうのですが、もちろん日本着払いのコレクトコールです。その時代、1分間1,000円を超えるような金額だったのですから、コレクトコールであっても迂闊に日本に電話などできるわけがありませんでした。

そんな経験をしながらも、ダンスのレッスンがすべて英語ということもあり、日本とは違う緊張感を持って受けたのを覚えています。それは英国スタイルへのこだわりの片鱗を見せつけられた1カ月でした。

その後、NATDの制約がなくなったこともあり、2年後に今度はプロとして初の渡英をすることになりました。資格もクラスも関係なく渡英できるようになり、日本人カップルの渡英ラッシュが始まったのです。全英選手権など英国の3大大会に多数エントリーし始めたのもこの時期からです。アジアからは日本からだけではなく台湾の選手も、もちろんドイツや北欧の国々からも大勢ロンドンにやって来ていました。世界のトップコーチャーのレッスンもあっという間に満杯。リチャード・グリーブ先生やアンソニー・ハーレー先生などカリスマダンサーと呼ばれた著名なコーチャーは、「1年半先」でなければレッスンが取れない状況だったのです。

 

自分の近い将来を見据え、積極的に勝負するためのプランを立てて実行!

この「1年半先」というのが、私にとって、近い将来を見据えて動く基本スパンになっていきました。1年半後にやっとレッスンが受けられるという「待ちの姿勢」ではなく、1年半後にはどのコンペに出て、どのようなランクに位置付けられるか。そのためには今どんなレッスンを受けて、どんな練習が必要かを常に頭に入れて動くようになったのです。今現在でいえば、「来年(2019年)の秋シーズンの予定を頭に入れて行動する」ということです。

「競技を楽しむ」という言い方があります。でもそれは、「勝った負けたを繰り返す中でインプルーブ(成長)を期待する」ことではありません。「いかにすれば勝負に勝てるかを考えて、実行すること」。それを「競技を楽しむ」と言うのです。そのためには情報収集の正確さと1年半先くらいを見据えてのプラン、そしてそれを実行するためのメンタル面でのタフさが伴わなければなりません。1年半後に自身のダンスをスペシャルなレベルにまで上げていくための「不断の努力」を惜しんではいけないのです。

2018年が始まったところですが、目先の競技会やイベントの準備に追われるのではなく、1年半先の2019年の秋冬、そして日本にとって大きな節目となる2020年の年明けに、明るいニュースでいっぱいのダンス界になるよう、組織運営する側も先を見据えて行動するようにしなければなりません。皆で前向きに取り組んで行こうではありませんか!

さあ、読者の皆様、今年も何卒よろしくお願い申し上げます!

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プロフィール

  • 田中 英和

    生年月日:8月9日
    出身:広島県広島市出身
    経歴:1997年2月にアデール・プレストン選手とカップルを組み、5月の全英選手権で日本選手初の第3位表彰台に輝く。「ヒデ&アデール」の愛称で国内外の大会で活躍し、翌98年の全英選手権5位入賞を最後に現役を引退。以降、審査員、コーチャーとして後進の育成にあたっている。また、本誌でも、7年にわたって連載レッスン「ナチュラル・ダンシング」シリーズを執筆し、大好評を博した。
    田中英和ダンスワールド

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