上達の秘訣 6 タンゴ(2)
一般論ですが、ボールルームダンスには3つの基本動作があり、それは「スウィング、ターン、スウェイ」の3つを指します。タンゴにはスウィングを利用したムーブメントはありませんから、加速があったとしてもワルツのナチュラルターンに見られるようなスウェイが結果として生じることはありません。スウィングもない、スウェイもない。つまり、基本動作の残りである「回転動作」を主な動作として踊るのがタンゴであるということになります。
そして回転動作とはターンの他にピヴォットやスイベルなどが挙げられます。CBMという背中にある動作で回転量を持って踊る時にはターンと呼ばれ、CBMPという足の位置関係を作るために身体の向きを変えずにつま先の向きを変え、身体中に絞りを加えるような回転動作がスイベルやピヴォットと言われるものです。その絞りが身体のトーンを増やし、次の移動時のターン、向き合った後のピヴォット、またPPに開くためのスイベルといった回転動作の連続でタンゴは踊られているのです。
女性のタンゴにおける開いたり閉じたりの動作の機敏性も大事ですが、俊敏につま先の向きを変えていける足首、ボールのプレッシャーの強さなど足元の強さ、そしてボールのインサイドエッジ(BのIE)のアングルの正確さが求められます。
ファイブステップやリンクでPPに開く動作をする場合も、後退や前進ウォークの最後にヒールが降りる直前(足首が強くなる瞬間)、ボールを使っての回転動作でPPに開く動作をすることになります。カップルとして90度まで開くことができるPPは、男性の開き具合が45度であれば女性もおおよそ同じ45度くらいで、男性の開き具合が少なければ女性は足元の回転動作がやや大きめになるというカップル間で絶えず調整できる感覚が求められます。
一つ注意点ですが、クローズをするときはあまりスイベルの動作を多用しません。これも一般的によく言われてきた事なのですが、「女性のクローズドプロムナードで3歩目に右足のBのIEでステップするときは、2歩目の左足でスイベルはしない」と言われています。これはバックコルテも同じです。3歩目の足の位置の解釈によってはスイベルをしなければフォローできないこともありますが、基本的にクローズをする前の動作はスウィングダンスで見られるような1/4~1/8というような回転の2分割はありません。
PPからのフィガーではっきりとスイベルでクローズするのはプロムナードリンク。男性2歩目の右足のつま先の向き次第で、女性2歩目のスイベルの量も変化しますから、LODに沿って壁に面するもっとも回転の少ないものから、女性がスイベルで左へ90度回転しLODに背面するものまで、男性のリード次第で自在にアラインメントを変えていけるのです。
また女性の大事な役割に、顔の向きを男性のリードに則って変えていけることも挙げられます。女性の顔の向きを変えるもっとも合理的なやり方は、顔の中心である鼻の頭を左から右へ、右から左へと変えることです。顎で向きを変えたり頬骨を振り回すような動作はロスが生じますし、そもそもエレガントさを欠いてしまいます。
ホールドはややコンパクトに、
回転のエネルギーが伝わりやすいように!
さあ、次はホールドの話です。ホールドは、女性のスイベルの動作や顔の向きを変えることを助けるものでなければなりません。ですから男性の右手は女性の背骨に対してほぼ直角になるように置かれ、回転から生まれる多少の遠心力を吸収できるよう、ワルツなどのスウィングダンスに比べてややコンパクトになります。
男性の左手は女性の右手を通じて女性の肘、肩に向かって回転のエネルギーが伝わりやすくなるように右手は通常よりやや前の内側にあり、左肘に鋭角の角度が見えるようになります。右足を5〜8cm後ろにスリップさせる動作でCBMPの足の位置を準備すると、男性の左肘から左ボディーサイド、左ヒップにかけて非常に男らしいカーブしたラインが出てきます。これによって女性をPPに、クローズへとリードする右ヒップの仕事ができるようになります。
女性の右手は、男性の左手の「横」に対し「縦」になるくらいの感覚で手のひらを合わせ軽く握手をする圧力でホールドします。PPに開くのは主に足元の位置関係での話ですから、PPに開いたりクローズできるように、背骨を極端に反らせることは控えた方が良いでしょう。左手は親指を少し折り曲げて他の4本の指をやや反らせながら、5本の指を揃えたまま男性の右肩の筋肉が細くなっていくあたりの上腕の下に当てがうようにします。これで男女の両腕のコンタクトはしっかりしたものになるでしょう。
スタッカートで緊張感のある動と静の動きを信条とするタンゴは、音楽を背景に、ムーブメントの特徴を理解しスタイルの理解を深めていくことで、ますます魅力のある、そして感動のレベルに到達するダンスへと発展していけるのです。
さあ、これが今年最後の私からのメッセージとなります。日本の、そして世界のダンス界が新たな発展に向けてどのような動きを見せるのか、2018年を期待を持って見ていきたいと思います。
今月号の付録DVDもぜひ参考にして頂き、皆様のレベルアップのお役に立てば幸いです。皆様、良いお年をお迎えください。