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ダンスビュウ2024年2月号 特別付録DVDのご紹介

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まもなく発売となるダンスビュウ2024年2月号(12月27日[水]発売)で、元統一全日本ボールルームファイナリストのショウスイ&田中彩恵組が講師を務めます。

回転と切り返し、スウェイの使い方などに焦点を当て、スローフォックストロットのムーブメントを自在に操る方法をレクチャーします。常識を超えるパフォーマンスと、オリジナルのアイディア、そして独特の話法もお楽しみに!

 

今月号のDVD収録レッスンは、ショウスイ&田中彩恵組の「変幻自在」です。レッスンは、主に回転と切り返しの場面に焦点を当て独自のイメージを駆使して身体の使い方を解説しています。本誌のDVDでは、過去多くの先生のスローフォクストロット(以下、スロー)のレッスンを提供してきましたが、回転と切り返しに着目したのは、今回のDVDレッスンが初めてです。

スローという種目に対して、皆さんはどんな体験をお持ちですか? 筆者にとってスローは、動線を取るのが難しい種目というイメージです。なぜならダンスパーティーやフリーダンスなど、混みあった状況でスローを踊ると、他のカップルと接触することが多かったからです。タンゴやワルツを踊るときよりも、スローの方が周囲のカップルの動きに注意することが必要である…、これは大方のダンス愛好家にとって思い当たる節があるはずです。接触するのは、踊り方の技術やステップの組み合わせも原因ですが「避けることが難しい」のは、スローという種目の本質からくる特徴だと思います。

その要因を挙げると、前進と後退を中心に構成されたフィガーが多く、移動量が多い。リバースウェーブ~バックフェザー、ウィーブなど男性が後退するステップが多く、後方が見えない状況がよくある。長いフィガーを仕掛けると、途中でブレーキをかけにくい、等々といったことが、主な原因だと思います。逆に言うとスローにおいては、他の人にぶつからないことが熟達した踊り手の証ということになる。そのために使う技のひとつが切り返しで、その代表的なステップがチェックだと思います。

今回のDVDレッスンでは、フォーラウェイからのチェック~ピボットや、バックチェック、サイドチェックなど、様々なチェックの技法が解説されています。レッスンのテーマは「変幻自在」であり、「チェックは、回転やムーブメントの切り返しの境目に入れる」と、田中先生は解説されています。スローという流暢に動きの中に、チェックアクションを入れるとどう見えるのか、何を表現できるのか…、色々な事例を実演されていますので、技術については、DVDをご覧いただければと思います。ただ一般の街場の会場でダンスを楽しんでいる愛好家にとっては、チェックが上手くできるようになれば間違いなくパーティでは好かれるはずです。この流れからこの場面でチェックを使えば上手く進んで行ける、という実用的な視点からチェックの使い方を研究されたり、実際に試してみたりするのも面白いと思います。

もうひとつの回転について。レッスンを終えたあとの挨拶の中で、ショウスイ先生は回転によって「女性のスカートがきれいに舞うことを心がけている」という主旨の発言をしています。続けて回転をきれいに行うには、男性の軸が大事だと、言及しています。この軸についての話を聞いたとき筆者は、昔のある光景を思い出しました。

20年ほど前にモダン出版に中途入社し、ダンスビュウに掲載する広告の担当になった筆者は、ある日JR横浜線の「古淵」という駅の前にあるダンス教室を訪ねました。当時はFAXが営業の主要なツールでしたが、町田と相模原の県境にある「古淵」という地名、そしてスペイン語で「中庭」を意味する瀟洒な教室名に興味をもち、どんな先生がいるのだろう、という思いで彼の地に営業に行ったのです。

まだ春浅い某日、電車を乗り継いで古淵駅で下車し、約束の時間より少し早めに教室に着きました。スタジオに入り、何気にプロの踊りを見学していると、若い痩身の男性がレッスンをしていて(練習だったかもしれない)、たしかダブルリバーススピンを繰り返し行なっていました。

…おっ。天井から頭を吊り、竜巻の如くシュッと切るようにスピンをする男性。ど真っすぐの軸と回転のキレに驚き“彼はいったい何者か”と思いました。しばしその動きに見惚れていると、まもなく女性の先生が原稿の打合せに現れました。初対面の挨拶をしたあと、筆者は思わず「あの男の方は、誰ですか」と先生にお聞きました。

先生「彼は中国の舞踏学校を卒業して、これからプロの競技に出る、ショウスイ先生といいます」
筆者「デビュー前なんですか、なにか凄い感じですね…」
先生「彼、私のリーダーなんです」と、男性の才能を確信している表情でした。
筆者「そうですか、いいですね」と思わず、言ってしまいました。

彼女の言葉は落ち着いたトーンでしたが、彼と踊る未来への強い意思が含まれているように感じ、横で話を聞いていた自分も、なんとなく弾むような気持になりました。そして広告の打合せを終えて教室を後にし、再び古淵駅のホームに立ったとき、先刻の光景を反芻(はんすう)していました。郊外の春を告げる空気。若い男性のダブルリバーススピン。希望を秘めた先生の言葉。営業の道すがら、偶然に出会った印象深い光景が脳裏に収まりました。

そして時は流れ、A級として活躍していたショウスイ先生は、田中彩恵先生と新カップルを組み、積極果敢な踊りでファイナリストへの階段を駆け上がっていくのは、周知のとおりです。そして古淵の教室で見た最初の印象は、国内最後の試合、優勝したユニバーサルグランプリまで変わりませんでした。

現役時代のショウスイ先生の競技中の踊りを見たとき、筆者が凄いと思ったのは、縦の軸の強さです。回転を続けて移動していくとき、足から天井にかけ一瞬にして太い軸が形成される。いや、実際に肉眼で見えるわけではないが、他の選手よりも強い軸が感じられる。回転や切り返し、多彩なスウェイを駆使してなお、二人がぶれないのは、この軸の強さがあるからだろう、と思います(あくまで筆者の感想です)。魚の泳ぎのように身体をしならせ、繰り出される変幻自在のムーブメント。それを可能にするのは、天に繋がるしなやかな軸…、そのような印象です。

DVD収録レッスンの編集作業を終え振り返ると、あの日の教室訪問から、もう20年以上経っていました。古淵の教室でたまたま見た若い男性の踊りと、そのときの驚きが、2本のDVDの制作(昨年の「才気煥発」と今回の「変幻自在」)へと導かれる、最初の一歩となっています。

いつどこで縁が始まり、それがどのように結ばれるのか分からない。筆者の中では、偶然の長い糸に引き寄せられるように制作した「変幻自在」。じっくりとご覧いただければ幸いです。

■2024年2月号特別付録DVD内容のご紹介

(文・ダンスビュウDVD制作担当/石川恭彦)

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