ダンスビュウ2023年9月号 特別付録DVDのご紹介
まもなく発売となるダンスビュウ2023年9月号(7月27日発売)で、特別付録DVDに収録のレッスンを務める講師は、元統一全日本ボールルームファイナリストの三浦大輔・三浦美和子先生です。
三浦大輔・三浦美和子組のレッスンは2021年7月号の「極上に舞う、スローフォックストロット~円の動きで見せ場を作れ!~」以来となります。本レッスンのコンセプトは「スタンダード・ダンス指南 ワルツ編」。ダンス愛好家の方々から寄せられた様々な悩みに関して、豊富な経験を元に解決策をアドバイスします。
今月のDVDは、読者から寄せられた質問に講師が回答していくQ&A形式の構成をとっています。本誌としては久しぶりのQ&Aのレッスン。講師は三浦大輔・三浦美和子先生で、タイトルは「スタンダード・ダンス指南」。ダンス愛好家がダンスを学ぶ過程で、直面するであろう普遍的な悩みに対して、三浦先生が回答をされています。読者から寄せられた質問は6つです。題材はワルツですが、ワルツだけの解決法ではなく、問いを糸口として様々な場面に適用できる身体の作り方、使い方に関して色々な視点からアドバイスが展開されています。
実は今回の企画は、タイトル先行で練り上げました。キーワードにしたのは「指南」という言葉。教え導く、という意味ですが、では指導や助言と何が違うのか?中国由来の言葉のようですが、「南」を指す、ということで、方向が入っている点が興味深い。では、方向とは何か。努力の方向、到達すべき地点のことでしょう。そしてそれに向かう道のりが、なんとなく暗示されているようなニュアンスを含んでいる。その指南役として、筆者の頭に浮かんだのは三浦先生でした。
それは以前JCF主催の大きな競技会における三浦大輔先生の解説(You Tubeで配信されたもの)が、とても面白かったからです。単なる選手の属性や過去の結果の紹介ではなく、目の前で踊っている選手が、今、何をイメージし、何を表現して踊ろうとしたのか、その時のステップはどんな性質のものなのか、あたかも選手と共に踊っているかのような臨場感が一つ一つの言葉から伝わってきたのです。
こういう踊りそのものを伝える解説は、フロアで踊っている選手にとっても励みになるし、一方でトップダンサーの踊りの中身を知りたい…、と思っている観客(視聴者)に、ダンサーにしか見えない世界の一端を教示することにも繋がります。こんなに面白い話を、今度はレクチャーとして再現したい…。そんな思いから筆者は質問を徐々に集め、三浦先生に講師をお願いした、という経緯です。
再び指南の話に戻ります。筆者の見聞では、社交ダンスは、どの方向に向かって努力するかで到達する地点が全く違ってくると思います。プロ・アマを問わず、街場で踊っているダンス愛好家であっても、方向性を意識しているかどうかで、時間の使い方やひとつひとつの体験の密度が違ってきます。その結果踊りの中身に大きな差が生じると思います。
しかし、これは結果としてダンスが上手くなった、という技術だけの話ではありません。自分の踊る力を深めていくときの、継続的な原動力になりえるのが方向への意識ということです。そして方向を直感したときに、現れるのが師匠(先生)で、その師匠がもたらしてくれる言葉が、指南というものではないでしょうか。
さて、指南が持っている性質には「偶然」と「受け手」と「時間」があると思います。というのは、指南をもたらしてくれるX氏に、いつ、どう出会うか、という幸運のくじを、受け手(学び手)は最初に選ぶことができないからです。たまたま入った教室の先生が、師匠であって私を導いてくれた、というラッキーはあるでしょう。しかし最初にその教室の門に入った時点では、誰が自分の師匠か分かるはずもない。後年振り返って「あの人に会ってことで導かれた」という偶然に左右されるのです。
また、もう一つの時間とは何か。それは本当に大切な教えというのは、殆どその場ではわからないことが多いという意味です。今日、先生に言われたことは、何のことかわからない。しかしずっと気になって時が過ぎ、数か月後、または10年後、ひょっとすると20年後に「あっ、このことか」と突然腑に落ちることがあります。あのとき理解できなかったことが、今腑に落ちた…、あの時と今を結ぶ、受け手(学ぶ側)の継続した歩みが、その時間が、指南というものを事後的に発現させるのではないか、と思います。
かなり回りくどい話になりました。いったい、何が言いたいのか。
指南とは、師匠(教える側)が勝手に弟子(学ぶ側)に向かって投げるボールではなく、学ぶ側が時を経て成熟したときに、初めて“指南だった”と受け取るものだ、ということです。後になって気づく。順序が逆転している。そうやって身につけていくのがダンスだと思います。いやこれは、社交ダンスに限らず、何かを継続的に学ぶ過程でよくあることです。
ある程度のキャリアの方であれば、おそらくこういう指南をいくつも受け取り、それによって自分のダンスがいつの間にか作られていた、ということを自覚できるのではないでしょうか。
たかがDVDかもしれません。しかしこのDVDをご覧になった方が、それぞれにとっての“指南”を発見していただくことを願っています。
■2023年9月号特別付録DVD内容のご紹介
(文・ダンスビュウDVD制作担当)