ダンスビュウ2023年6月号 特別付録DVDのご紹介
まもなく発売となるダンスビュウ2023年6月号(4月27日発売)で、特別付録DVDに収録のレッスンを務める講師は、JDC全日本ボールルームチャンピオンの西尾浩一・下田 藍組です。ダンサーに本来備わっている力を引き出すことをテーマに、4つの技術をアラカルト形式で解説します。
今月号のDVDは、西尾浩一・下田藍組の「能力が目覚めるスーパーテクニック4」をお届けします。種目はタンゴです。4つの技術を取り上げ、それぞれの技術を適用できるフィガーを実演し、解説されています。テクニックの名称は、「脱力&ヘッドパワー」・「サイド&バック」・「スティッキング・レッグス」・「アンカー」。それぞれの内容はDVDをご覧いただければと思いますが、ダンス用語ではなく、身体を使うときのイメージや感覚から西尾先生が名付けたものです。
ところで、「タンゴ」というと読者の皆さんは、どんなイメージがありますか?
筆者の感覚では、人によって、得手不得手、好き嫌いが分かれる種目という印象があります。例えば、ワルツやスローが好きでない、という方に、30年のダンス歴の中で、筆者は会ったことはありません。一方、どうもタンゴは嫌いなんだ、踊る気がしない、苦手だという方はたまにいます。また逆にタンゴが凄く好きだ、という方もいます。
好き嫌いが分かれるタンゴ。これは、一体どうしてなんだろう。
他のスタンダードダンスは、スウィングがあります。スウィングの性質は種目によって異なるものの、その揺らぎが、そして音楽に合わせて揺らぎを共有する感覚が、素朴に心地良いのだと思います。男女が揺らぎに乗って進んでいける。重力や惰力など、自然の力に委ねることが、もともと踊りの中に含まれている。スウィングダンスの根底には、ブランコやハンモックの揺れなどに通じる、快の感覚があるのではないか。それが嫌いな方がいない理由のひとつでしょう。
一方タンゴは、スウィングが少ないので、単純に脚力がいる、という側面があると思います。進んで行く、止まる、すばやく入れ替わる、瞬時に切り返すなど、個々の動作にキレ味が要求されるステップが多い。キレの前提として、体幹の安定感や筋力の強さ、しなやかな軸も必要でしょう。さらに軸を作るためには、左右を分けること、軸の切り替えには瞬時に緩むことも必要でしょう。またスピード感を出すための組み方や、位置関係にも工夫をしなければいけない。このように考えていくと、タンゴはワルツやスローと比べて、より人為的な工夫が必要のような感じがする。もちろん、スウィングダンスには、それに応じた踊り方があるのでしょうが、タンゴは、それとは別個に“何か”を学ばなければならない。その“何か”を学ぶときに出てくる困難が、タンゴに好き嫌いが生じる原因のひとつなのではないか、と筆者は推測します。
今回の西尾先生のレッスンには、タンゴを学んでいく過程で、それぞれのダンサーが感じるであろう疑問や困りごとに対するヒントが詰まっているように思います。テクニックの名称から想像がつくと思いますが、脱力と頭の振りを利用した力強さの表現、回転をスムーズにするための足の着き方、安定感を増すための脚部のコンタクトの方法、キレ味を作るための肩の重みと顔の向きの関係など、「なるほど」と思うテクニックが次々にレクチャーされます。
ダンスを学ぶ者が知りたいのは、そのステップをやっているときの感覚です。
もちろん、物理的な事柄、例えば方向や位置関係やタイミングも大切でしょうが、それらを全て含んで、“どんな感じなの”ということを掴みたい。そしてその感じというのは、既成の言葉ではなく、比喩でしか伝えることができないものだと思います。
このDVDで味わってほしいのは、言葉です。
西尾先生が語る独自の感覚に基づいた言葉と、それをさらに分かりやすく別の言い方で表現する下田先生の言葉。それぞれの身体感覚をベースにした比喩が色々な場面で現出します。その言葉を唱え、身体になじませてみてはいかかでしょう。
■2023年6月号特別付録DVD内容のご紹介
(文・ダンスビュウDVD制作担当)