ダンスビュウ2023年3月号 特別付録DVDのご紹介
まもなく発売となるダンスビュウ2023年3月号(1月27日発売)で、特別付録DVDに収録のレッスンを務める講師は、統一全日本ボールルームファイナリストである小林恒路・赤沼美帆先生です。小林・赤沼組の本誌DVDレッスンは4回目となります。クイックステップの動作をスウィング、シャッセ、ラン、ジャンプの4種類に分け、それぞれの動きを使い分けて踊る方法をレッスンします。
今月のDVDの講師は小林恒路&赤沼美帆先生です。種目はクイックステップで、レッスンのコンセプトは“フライング”。ダンスビュウとしては、久しぶりのクイックステップのリリース。本誌を手に取って“フライング”と発音してみてください。心躍る気がしませんか!
クイックステップは興味深い種目です。筆者は1980年代の後半から都内を中心に、複数の教室でダンスを習い、そして公共施設で踊ってきて、街場の中でどんな種目が踊られているのか、ということを自分なりに肌感覚で感じてきました。
筆者の観察によると30年前と比べて、最も普及した種目の一つがクイックステップだと思います。例えばその昔、ダンスパーティでは、クイックの曲がかかると、一斉にフロアに繰り出した参加者の大半がジルバを踊っていました。それぞれが独自の回転技を繰り出す中を、一組か二組のスタンダードのダンサーがジルバ組の間を縫うように、クイックステップで軽やかに抜けていく。クイックを踊る、すっと伸びた彼らの背筋には、その他大勢ではないことを示す颯爽とした雰囲気が漂っていました。
時は流れ、今では多くの参加者は、クイックの曲で平気でクイックステップを踊ります。もちろん、当たり前のことです。クイックの曲で、代用として(?)熱くジルバを踊っていた、あの頃のファン。遠ざかる昭和の風景に変わって、出現したのがクイックステップです。
何が言いたいのか。パーティ(社交)ダンスの華だったジルバの需要が減り、クイックステップを踊る人が増えた。種目の需要の増減の背景には、どんな要因があるのだろう?
何度かのダンスブームの波を経て、今の競技スタイルが膾炙(かいしゃ)し、それを受けて教室で教える種目も多様化した。パーティダンスから競技ダンスの種目へ、ややマイナーな種目や上級者向けの種目も、団体レッスンの形式でリーズナブルな価格で供給されてきた。それがクイックステップの愛好者を増やした一因でしょう。
しかし競技ダンスの普及が、競技種目が踊られる頻度を増やした一番の要因かというと、街場の愛好家の次元においては、必ずしもそうとは言えないと思います。なぜならラテンの競技種目であるサンバを踊る方は増えている様子はないし、パソドブレもたぶん、一部の人に限られています(もちろん、時と場所によっては、踊られる場合もあると思いますが)。つまり根強い愛好家、競技選手はいても、カジュアルな領域で普及しなかった種目もあるのに対し、クイックステップはそうではなかった。
その軽やかな疾走感が、人々の憧れを喚起し、広く魅了した。「私もクイックを踊りたい…」と思わせるキャラクターが、クイックステップ人口を増やしてきたのではないでしょうか?
ひとつの問いがあります。クイックステップって、どんな種目でしょうか。
小林先生は「クイックステップは総合種目」と語っています。つまり他のスタンダード種目と共通のステップや身体の使い方も多く、諸々の経験を十分に積んだ方であれば、そこで培った技術をクイックステップに転用し、ベーシックの範囲では、そこそこ踊れてしまう場合もある、ということ。しかしその反面、曲が速い、ステップの種類が多い、タイミングの取り方が複雑で歩数も多い、移動量が大きい、二人が外れてしまいやすい、などクイックステップ特有の難しさもある。他の種目から応用できる部分と、そうでない部分がある、軽やかさの中に複雑さを含んでいる、それがクイックステップの特性だろう、と思います。
長々とクイックステップをめぐる今昔の風景と、筆者の印象を書きましたが、今回のDVDは、カッコいいクイックステップを踊りたい方にとって、とても親切なレッスンだと思いました。クイックステップの動きを整理し、複数のアクションの特徴とその役割を分析し、さらに練習方法を実演し、個々のステップのポイントを解説しているからです。
まず冒頭のチャプターでは、クイックステップの素早いアクションに対応した立ち方、姿勢、ホールドに関する説明をしています。次にクイックの動きを「スウィング」・「シャッセ」・「ラン」・「ジャンプ」の4種類に分け、それぞれの動きの特徴と、スムーズに、美しく見せるためのポイントをレクチャー。クイックステップを学ぶ過程で、大半の方が躓きやすいのは「跳ねたり、走ったり」するアクションだと思いますが、その練習方法を紹介し、さらにモデルフィガーにそって、動きの切り替え方を解説されています。
今回の作品を編集し、テロップを入れながら筆者は「クイックステップは、それほどこわくない、こんな風にやれば、自分にもできそうかな」という勇気をもらいました。もちろん、実際にマスターするためには、繰り返し練習して、身体に覚え込ませることが必要でしょうが、事前に知識があれば、あやふやなイメージから尻込みしていた課題にもチャレンジできるし、スムーズにマスターできるはずです。
また、クイックステップに限らずナチュラル回転の入れ替わりの方法など、ボールルームダンス全般に適用できる技術についても、詳しく解説されています。これからクイックステップに挑戦する方、あるいはさらにかっこよく踊りたい方、くり返しご覧いただければ幸いです。
■2023年3月号特別付録DVD内容のご紹介
(文・ダンスビュウDVD制作担当)