クィアタンゴ・ワークショップ in ニューヨーク 〜Tango Technique for Male followers and Female leaders #1
2019NY在住のピアニスト・平沢絢子さんから久々の “クィアタンゴ” について寄稿です。
(前回までの記事はこちら。【1回目】 【2回目】 【3回目】)
今回もニューヨークで開催されたユニークなワークショップの模様をレポートしていただいています。前後編の2回でお届けいたします。
まだ肌寒いニューヨークの4月、マンハッタンでアルゼンチンタンゴの画期的なワークショップが開催されました。
名付けてTango Technique for Male followers and Female leaders。男性のフォロワーと女性のリーダーのためのテクニッククラスです。
コロンビアから若手のトップダンサー、Juan David Bedoya(以下ホアン先生)と彼のパートナー、Diana Suárez Chica(以下ディアナ先生)を招いて開催されたクィア・タンゴのクラス、今回はその様子をレポートします。
今回はワシントンD.C.とフィラデルフィアからも十数人が参加し、プラクティカ(練習時間)を含め3時間の大きなワークショップとなりました。
まず最初の1時間はリーダー(このクラスでは主に女性)とフォロワー(このクラスでは主に男性)に分かれてテクニックのトレーニング。
男性のクラスはフォロワーに必要なコアを使った立ち方、歩き方、そして軽やかなピボットの仕方を徹底していきます。
テクニックに厳しいホアン先生、「体のラインをまっすぐに、背骨に空気をいれる感じで!」
それぞれの生徒の立ち方から直していきます。
一方、女性のクラスは女性リーダーにとっては難しい、クローズドエンブレイス(アルゼンチンタンゴ特有の抱擁、アブラッソ)の練習。
男性に比べて体格が華奢な女性は、初心者はとくにオープン、お互いの胴が触れない形でリードしがちです。コアを使い、腕ではなく胸でリードするアルゼンチンタンゴ特有の抱擁を成功させるこつを、細かく解説し、実践していくディアナ先生。
リーダー、フォロワーに分かれた1時間のテクニッククラスが終わると、次の1時間は合同クラスです。リーダーとフォロワーがパートナーを組んで練習していきます。
鍛えたテクニックを使って、アルゼンチンタンゴでとても重要なピボット、オーチョと、ヒーロ(フォロワーがリーダーのまわりをピボットしながら回る)を洗練させていきます。
「あなたは腕を使い過ぎ、トルソー(胴体)を使って…」
「相手の腰骨を意識して、平行に!」
一人一人に適切なアドバイスを与えていくホアン先生とディアナ先生。
最後の1時間はプラクティカ(自由練習)の時間です。
クィア・タンゴの特徴は男女に関係なく誰とでも踊れること。誰を誘っても、誰がリーダーになってもフォロワーになってもよいのです。
ニューヨーク、ワシントンD.C.、フィラデルフィアのクィアタンゴのメンバーがそれぞれ自己紹介をしあい、とても楽しい雰囲気のプラクティカになりました。
ワークショップに参加した方々に感想を聞いてみました。
女性リーダー :リーダー、フォロワーの役割がどう違うのか、それぞれの役割にどうアプローチするのかを考えさせられました。フォロワーに意識を集中して、フォロワーをどこに送るのかをはっきりさせること、送る力は腕ではなく、胴体をフルに使うのだということを学びました。
男性フォロワー :姿勢をまっすぐに保つこと、方向を変えてステップを踏む前に、しっかり完全にピボットをすることを学びました。どの筋肉をいつ、どのように使うかなどのアドバイスをもらったことが、これからのダンスにとても役立つと思います。
フォロワーとして、ダンスの中で何をしなければいけないのかということをより理解することができました。
次回は、ホアン先生とディアナ先生のインタビューを掲載します。
【筆者プロフィール】
平沢絢子(ひらさわあやこ)
大阪出身。現在ニューヨークでピアニストとして活動し、おもにバレエピアニストとして様々なスタジオ、バレエ学校で活躍している。ニューヨークに来てからアルゼンチンタンゴをはじめ、ある日ウォルター・ペレス、レオナルド・サルデッラのパフォーマンスを見てクィアタンゴに出会う。女性でもリードができ、曲の途中で役割を交代できることに魅力を感じ、クィアタンゴのイベントに参加。本人はストレートだが関係なく受け入れてくれたコミュニティのあたたかい雰囲気に感動し、ジェンダーに関係なくアルゼンチンタンゴを愛する人すべてにクィアタンゴを知ってほしいと思っている。