社交ダンス教室「駒沢ダンスガーデン」への参画から、現在では福利厚生目的にとどまらない社交ダンス部の設立を経て、2023年8月からは、社交ダンスドレス専門のレンタルドレス事業（IVY DRESS）やレンタルスタジオ事業「～effect～エフェクト」をスタートさせるなど、社交ダンス界に新たな風を吹き込んでいる株式会社 K’s Corporation（ ケーズ コーポレーション）。

ここでは同社のキーマンである代表取締役の鴨生奈々子（かもう ななこ）氏のコラムを特別に公開します。

本記事は本誌月刊ダンスビュウ2024年9月号（7/26発売）に掲載しています。

健康寿命を延ばすために

不動産会社の経営者でダンスセンスのない私が、“社交ダンス盛り上げ隊”を標榜するなど、何故ここまで社交ダンスを推奨するのか。これまでに、雑誌やTVなどの各種メディアでもお伝えしていることですが、今回は少し深掘りしてお話しします。

日本人の平均寿命※1は男女ともに世界一ですが、今最も注目されているのは「いかに健康寿命※2を延ばすか」です。以前までは、60～65歳で定年を迎えて勤め先の会社を退職（リタイア）、老後はゆっくり過ごすといった風潮がありましたが、今は男性も女性も80歳前後で元気に働いています。弊社にも80歳前後の社員が数名在籍しています。

このように、リタイア後も仕事を継続するのは「老後資金がなく生活費を稼ぐ」ためもありますが、人とのコミュニケーションを取って（孤独にならない）、「認知症にならない」ためという意味合いも大きいと私は考えています。

認知症にならない生き方とは

認知症になるのはなぜか。調べてみると、「老化とともに脳内に特殊な異常タンパク質が増加、蓄積し、それが脳細胞にダメージを与えることで発症する…」という、わかるような、わからないような見解を目にします。もちろん、医学的な見解はそのようになるのでしょう。そのうえで私は「人間が本能的に持っている承認欲求が満たされなくなっていくこと」が大きな原因だと考えています。

いわゆる現役時代での仕事場では、多くの人との接触があり、相互の指示出しや感謝の言葉が飛び交う環境があります。リタイア後にはそうした環境がなくなり、「自身の存在意義を疑う」ようになります。その何ともいえない虚無感から、脳が現実逃避をし始めて記憶をなくすという「心の防衛本能が働く」ことが、認知症を発症する理由のひとつではないかと私は考えています。　現実問題として、来年2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人（約700万人）が認知症になると予測※3されています。認知症患者を介護する側（家族など）は自身の日常生活に支障をきたすほど疲弊します。そうならないためにも、積極的に「認知症にならない生き方」をしなければいけません。リタイア後も新しいことに挑戦し、積極的に人と関わって「孤独にならない環境で生活すること」を努力するべきです。

笑顔とダンスが絶えない生活を

ダンスは何歳でもできるスポーツであり、人とのコミュニケーションが欠かせないものです。そのうえで、うまく踊れると人から褒められ（承認欲求が満たされる）、新たなステップを覚えるためには教室に足を運んでレッスンを受ける（孤独にならない）、もちろん頭も使わないといけません。これらすべてが認知症の発症予防に絶大な効果があると考えており、私が社交ダンスを強く推奨する理由です。

笑顔はNK細胞※4を活性化して免疫力を高めるといわれます。笑いの絶えないダンス教室やサークルで、他人を褒め合う明るいパーティで、心身ともに楽しい日々を送りましょう。

本誌読者のみなさんの多くはダンスの愛好家であると思いますので、これからもできるだけ長く続けてください。そのうえで、社交ダンスを経験していない方が周りにいらっしゃったら、ぜひ誘ってください。

私もたくさんのパーティに参加していますので、会場で見かけましたら、気さくに声をかけてください。私も大きな拍手をしながら、大きな声援を送らせていただきます。

まだまだお元気なみなさまと一緒に、元気な日本にしていくことができれば幸せです。

※1　日本の男性は81.05歳、女性は87.09歳（厚生労働省「簡易生命表［令和4年］より）
※2　「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のこと。日本の男性は72.68歳、女性は75.38歳（令和5年版高齢社会白書より）
※3　「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」より
※4　免疫細胞のひとつ。体内で広く行動し、がん細胞やウイルス感染細胞などの異常細胞に攻撃を仕掛ける。