山形県立谷地高校で28年続く社交ダンス授業[東北TOPICS]
※本記事は月刊ダンスビュウ2024年3月号(1/26発売)の79頁に掲載しています。
山形県河北町にある県立谷地(やち)高等学校では「相手を思いやり、尊重する心を育んでほしい」「生涯スポーツにつなげたい」との思いから、3年生の体育の授業に社交ダンスを取り入れて28年になります。外部講師を招いての本格的な社交ダンスレッスンを継続していることは、東北でも類を見ない取り組みです。2023年度は3年生64名(男子28名・女子36名)が参加、2023年10月31日〜11月28日の約1カ月をかけて、計7回の授業と発表会が行なわれました。
講師を務めるのは、山形県プロダンスインストラクター協会会長の後藤重幸先生と高橋由美先生(以下、由美先生・ダンススタジオG)です。由美先生によると「高校生たちはみんな一生懸命にダンスを習ってくれて、初めは恥ずかしそうにしていたものの、嫌がる子とかはいませんでした」とのこと。由美先生がつけていた日記から、授業の内容を一部抜粋して紹介します。
▽第一回(10月31日)
講師紹介と挨拶、簡単な社交ダンスの説明。チャチャチャのクローズドベーシックからニューヨークをレクチャー。例年通りニ
ューヨークで盛り上がる。今年はほぼ全員が間違わずにステップを踏めて、なかなか快調な滑り出し。
▽第二回(11月7日)
チャチャチャとジルバのリズム練習。前回休みの生徒が数名いて苦戦するもなんとかクリア。
▽第三回(11月10日)
習得が早い生徒たちに合わせ、チャチャチャにスポットターンをプラス。動きが早いので結構盛り上がる。
▽第四回(11月14日)
ジルバのチェンジオブハンドビハインドバックに挑戦。苦労した男子生徒もいたようだが、最後には全員納得した様子。
▽第五回(11月17 日)
チャチャチャ・ジルバの復習とワルツ。今年もワルツに苦戦する生徒たち。足をクローズした後にもう一度同じ足を出してしまったり、方向が全くわからなくなったりする子が続出。
▽第七回(11月24日)
総復習。やはりワルツに苦戦している生徒が多いが、楽しそうに踊っていたので良しとする。こうして全7回の授業を終え、発表会当日(11月28日)を迎えます。生徒たちはジルバ・チャチャチャ・ワルツの3種目を曲に乗ってパートナーと踊ることに。講師によるデモンストレーションも行なわれ、生徒たちはノリノリで歓喜していました。
ラストダンスのとき、由美先生が生徒たちに感想を聞くと「めちゃめちゃ楽しかった」「またやってみたい。大学で部活があったら入りたい」「社交ダンスのレッスンのあと、今まで話さなかったクラスメートとも話をするようになって、クラスの雰囲気がとてもよくなった」と話してくれて、本当に嬉しかったそうです。
講師として2023年の授業を終えた感想を聞きました。
「私たちが引き継いでから今年で11年目の谷地高校のダンスレッスン。朝早かったり、体育館が凍てつく寒さだったり、大変なこともありますが、最後には生徒たちの成長を見ることができ、とても充実した気持ちで終えることができました。発表会にはテレビ局二社が取材に来て、すぐに夕方のニュースで放送されました。楽しそうに踊っている生徒たちの様子をたくさんの視聴者の皆さんに見ていただけたと思います」
谷地高校の社交ダンス授業は、新聞やテレビ、ネットニュースでも取り上げられ、ダンス関係者も注目する取り組みとなっています。
レポート/木下なつ(プロダンサー・ライター)